生え抜きの最高幹部ら4人が退任し、4月に新たな体制へ移行したジョンマーク・ギルソン社長率いる三菱ケミカルグループ(MCG)。23年1月の人事発表当初は社内外に衝撃が走り、一部媒体にはこの人事の裏を説く“怪文書”も投げ込まれた。だが、表面上は新規中期経営計画とともに、何事もなかったかのように粛々と新体制の幕が開けた。
「本当に石油化学(石化)事業の分離ができるのか」
「ヘルスケア事業でどう成長を描くのか」
MCGの行く末に関心を寄せる向きは多方面にわたるが、その裏ではホッとしている向きもあった。何を隠そう日本化学工業協会(日化協)と日本製薬工業協会(製薬協)という2つの業界団体関係者である。というのも、今回、首を切られたMCG最高幹部が両団体首脳人事と密接に関わっているからだ。
まず1期2年の任期の途中でMCG代表取締役を退任に追いやられてしまった福田信夫氏を会長に戴く日化協から見たい。
福田氏が日化協会長に就任したのは昨年5月のことだ。日化協の会長職は、MCG、住友化学、三井化学という財閥系3社に加え、今年1月に社名をレゾナック・ホールディングスに改めた昭和電工の4社が順番で回している。会長を担うのは各社の社長というのが通例となっている。
22年の改選期も、MCGから会長を出すのが既定路線だが、ここで問題となったのが、「適任者が誰なのか」(業界関係者)ということだ。なぜならば、ギルソン改革の一環で、MCGは事業会社に社長を置かなくなったからである。このため、本来なら化学事業を担う事業子会社三菱ケミカルから出すのがセオリーではあるものの、「有資格者」がいないという事態に陥ってしまった。