人が他人を信頼する瞬間

 勘違いしがちなのですが、他者からの承認は、肩書きや実績によって得られるものではありません。

「社長だから」「役員だから」「有名だから」承認されるのではないですし、実績があれば「すごい」とは思われるでしょうが、それだけで信頼を得られるわけではありません。

 むしろ肩書きだけで承認してくる人は、立場を利用したいという下心のある、媚を売る人間だけと言ってもいいでしょう。

 では人はどのようなときに、他者を承認し、信頼するのでしょうか?

 それは、“親切にされたとき”です。

 つまり、実績を出した上で、他者に親切にできる人が、他者から承認を得て、信頼されるのです。

 結果を出した上で、他者に親切にできる人物は徐々に「カリスマ」と呼ばれるようになります。

 カリスマは自称するものではありません。
 本人に親切にされた多くの人が、「この人はすごい」と吹聴して回ることで、その人が徐々に神格化されていくのです。

 実際、カリスマと称される人に直接会ってみると、とても感じのいい人であったり、思った以上に優しい人だったりします。
 有名人に会って、「意外と普通でした」とコメントする人を見かけますが、これこそ、正直な反応なのです。

カリスマ社長がやっていたこと

 私がお会いした経営者の中に、社員の承認欲求を満たすことがめっぽううまい経営者がいました。

 その経営者は自社の社員の一人ひとりの子どもの受験日まで覚えていて「息子さんの受験が心配なら、今日は帰ったらどうだ」とか、社員の配偶者の誕生日には必ず花を届けさせる、とか、細かく社員に親切にすることを実践するのです。

 もちろん、その経営者は意図的にやっています。
 その一連の行動は「形だけ」ではなく、本気でした。
 ゆえに、社員たちは「あの社長は本当にすごい。カリスマを感じる」と言うのです。

 このように、コミュニケーションの強者は、承認欲求を満たしてもらう側ではなく、承認欲求を満たす側に回ることで、上手に信頼を得るのです。

認めてほしいときほど、他人に親切にせよ

 コミュニケーションに悩んでいたり、周囲から信頼を得たい人にぜひ明日から意識していただきたいのは、

 認めてほしいときほど、他人に親切にする

 ということです。

 幼稚園でもこのように教えられます。

「お友だちに親切にしましょう」

 このおもちゃで遊びたい!と思って友だちと取り合いになった時、自分の遊びたい気持ちを抑えて、友だちに貸してあげることができるか。

 幼稚園でも教えられるということは、これは人間関係の基本中の基本、と言って良いでしょう。

 しかしながら、社会に出てもできない人はたくさんいます。だからこそ、これは人心掌握術として効果を発揮するのです。

「人心掌握術」と聞くと、詐欺などを連想する悪いイメージを持つ人がいるかもしれません。

 ただ、「人の心を掴む」というのは、ビジネスでもプライベートでも、人が人と関わらずには生きていけない以上、必要不可欠でしょう。

 もちろん、悪用は厳禁です。
 悪いことには使わないでください。

 それほど効果のあるものですから。