IRジャパンの「マッチポンプ」疑惑に激怒したのが、“被害者”東京機械製作所の大株主、読売新聞だ。その真意を問うべくダイヤモンド編集部が読売新聞グループ本社に質問状を送付したところ、代表取締役社長の山口寿一氏が直筆の「所見」を寄せた。山口氏はIRジャパンに「相応のけじめ」を求め、さらには同社を信用補完した大手法律事務所や金融当局の問題に言及。ダイヤモンド編集部は山口氏の主張に同意し、特集『マッチポンプ IRジャパンの正体』(全6回)の#4で、その全文を掲載する。(読売新聞グループ本社代表取締役社長 山口寿一)
違法な手法の“乗っ取り”をそそのかした
「相当悪質」な事態を収拾させてはいけない!
今回の事態は重要な論点を多数示しました。IRJグループは再発防止策として利益相反管理体制の整備を表明しましたが、このことのみで事態を収拾させてはいけません。公正な市場のために、論点は矮小化することなく、むしろ拡張して広く検討されるべきです。
今回の事態の第一の核心は、アイ・アールジャパンホールディングス(IRJ HD)代表取締役副社長兼COO(最高執行責任者)だった栗尾拓滋氏が、アジア開発キャピタル(ADC)代表取締役社長だったアンセム・ウォン氏に面会し、東京機械製作所(TKS)を名指ししたうえで、「複数のファンドを箱として使い、実質の主体が表に出ないようにして安価に過半数の株式を買い占め、経営権を取得する」との提案をしたことにあります。
いわゆるウルフパック戦術は、金融商品取引法27条の23に定める大量保有報告書制度(5%ルール)を潜脱するもので違法とみなすべき買収手法です。
敵対的買収やM&Aのアドバイザリー業務を本業とする東証プライム市場上場会社の代表取締役COOの職にあった人物が、特定の企業を標的にして社名を明示のうえ違法な手法による乗っ取りをそそのかしたのですから、栗尾氏の行為は相当悪質です。
2021年に勃発した東京機械製作所の買収攻防戦を巡り、防衛側の中心的役割を果たしたのが読売新聞だ。再発防止策のみで事態を収拾させてはならないと説く山口社長の筆致からは、防衛アドバイザーだったIRジャパンの「裏切り」に対する静かな怒りが伝わってくる。そして山口氏の批判の矛先は、元司法記者として熟知する大手法律事務所や、金融業界の構造問題へと向けられてゆく――。