近年、激化するアクティビストファンドと上場企業経営陣の紛争で、需要が高まっているのがIRジャパンを含む「企業防衛」アドバイザリービジネスだ。情報戦が過熱する中、防衛アドバイザーは敵方スキャンダルのリークや従業員声明の捏造、匿名の手紙による脅迫など、かつての総会屋をほうふつとさせる危ない戦術に手を染め始めている。特集『マッチポンプ IRジャパンの正体』(全6回)の#3では、現代の総会屋ともいえる「ネオ総会屋」の最新手口を解明する。(フリーライター 村上 力、ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
フジテックvsオアシスの死闘
現代の「総会屋」が株主総会の裏で暗躍
上場企業が株主側の社外取締役候補を「脅迫」したとされる、前代未聞の疑惑が浮上している。エレベーター大手のフジテックと、香港を拠点とするアクティビストファンド、オアシス・マネジメントの紛争においてだ。
事の発端は昨年5月、オアシスがフジテックの低い収益性と株価、創業家の内山高一社長(当時)による“会社私物化”を問題視するキャンペーンを開始したことだ。
当時、内山一族の資産管理会社の持ち分6.21%に対し、オアシスは7.54%と勢力が拮抗。内山氏の社長選任議案が株主総会で否決される恐れがあった。そこでフジテックは6月の定時株主総会直前に社長選任議案を取り下げ、内山氏を「会長」とすることで時間稼ぎを図る。
これに対してオアシスは12月に臨時株主総会の開催を請求。臨時総会は今年2月に開催され、会社提案の社外取締役選任議案が否決、オアシスが提案した社外取6人のうち4人が可決される結果となった。
問題の脅迫は、臨時総会の請求から開催までの間に行われたという。
その詳細を次ページで明らかにし、株主総会の裏で暗躍する現代の「総会屋」ともいえる存在を白日の下に晒す。