マッチポンプ IRジャパンの正体 #6Photo by Takeshi Shigeishi

IRジャパンの「マッチポンプ」疑惑を調査した第三者委員会の山口利昭弁護士がダイヤモンド編集部の取材に応じた。3カ月間に及んだ調査の舞台裏を明かし、報告書で「絶対的権力者」と断じた寺下史郎社長や再発防止策への「注文」について語った。特集『マッチポンプ IRジャパンの正体』(全6回)の最終回は、その山口弁護士へのインタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

組織ぐるみなら到底許容できない
焦点の栗尾氏から得た証言の中身は?

――昨年12月に第三者委員会の委員長に就任した経緯を教えてください。

 私自身がIRジャパンから直接依頼を受けたわけではなく、委員候補者の弁護士から話がありました。

 IRジャパンは企業のM&A(合併・買収)や委任状争奪戦のアドバイザリーを業務とし、利害関係のある弁護士は少なくありません。大阪に事務所があってそうした利害関係がなく、第三者委員会の調査経験もある私に声が掛かったということでしょう。

――確かに東京の大手法律事務所にはIRジャパンと何らかの取引があり、第三者委員会の委員になると独立性や中立性に問題が生じる弁護士は多いです。ところで今回の調査対象である「マッチポンプ」疑惑について、第一印象はいかがでしたか。

 調査開始前のまっさらの状態であの記事を読んだとき、組織ぐるみであればとんでもない問題だと思いました。社会的に到底許容されるものではない。

 ただしIRジャパンの代表取締役副社長だった栗尾拓滋氏が単独で自身の利益のために行動していたのだとすれば、組織ぐるみとは言いにくい部分があるので、そこは解明しないといけないと思いました。

 前回の調査(2022年8月公表の調査報告書)とは違い、今回は栗尾氏から文書で回答を得られたことが大きかった。IRジャパンの危機意識も強く、事務局スタッフに全面的に協力してもらい、スムーズに証拠を集めることができました。

――その調査の結果、IRジャパンは「組織ぐるみ」でマッチポンプを行っていたのでしょうか。

ダイヤモンド・オンラインが、IRジャパンの「マッチポンプ」疑惑を暴いたスクープ記事(『IRジャパン衝撃の「買収提案書」入手、東京機械の買収防衛でマッチポンプ疑惑』参照)を配信したのが22年11月10日のことだ。その翌月、山口氏ら弁護士4人から成る第三者委員会が設置され、関係資料の精査や役職員らへのヒアリングなどを行い、マッチポンプにとどまらないIRジャパンの数々の問題をあぶり出した。3カ月間の調査の現場で山口弁護士が見たIRジャパンの正体を、次ページから明らかにしていく。