学び直しのカギは
「ド基礎」に戻れるかどうか

――出願に必要な研究テーマを提出する書式、研究計画書はどうされましたか。

 研究計画書や論文の書き方の本を買い、類似の先行研究を参照し、書き方を学びました。まずは、下手でもいいから自分で実際に書いてみて、受験先の研究室の博士の方に送って添削してもらうということを繰り返して、ブラッシュアップしました。受験先の先生にコンタクトを取った時に、どなたかに添削してもらえないか、あらかじめ確認しました。研究室によるかもしれませんが、たいてい応じてくれると思います。

――勉強に対するモチベーションは高校、大学時代とは違いますか。

 最初は院試とは関係なく、興味を持ったのでやっていたんです。本や参考書もいろいろな種類があり、YouTubeの動画なども含め、ネットからも情報を拾えて、勉強する環境として、とても取り組みやすいし、今のほうが断然勉強自体も楽しいですね。

 大学入試では、高3の夏に部活が終わってから半年で一気に詰め込んで勉強したので、公式だけ覚えて、この分野は捨てて、最低何割とれればいいというような考えで勉強していたので、そのときとは全然違います。院試は受かっても受からなくてもいいと思っていたので、学びたくて学んでいるから、じっくり基礎から勉強できるし、何度でもやり直せる。ちゃんと一つ一つ理解して進むから、すべてのことにいちいち納得感があるんですよ。統計学も経済学も、英語も数学も、基礎の基礎から勉強しなおしたのですが、基礎から少しずつ勉強していると意外とすんなり理解できるようになるんです。たとえば、この年になって初めて、微分や積分で何をしようとしているのかがわかって感動しました。積分は面積を求めているのですが、「えっ、そうだったの? 面積を求めていたの?」って。(笑)

 僕は、「中1からの英語」みたいな「ド基礎」から勉強することにまったく抵抗がなく、そういう本を読んでいるのを他人に見られても一切恥ずかしいとは思わないんです。無理に難しい本に手を出して、いつまでも前に進めないでいる人が多い気がします。プライドを捨てて「ド基礎」に戻れるかどうかが、学び直しがうまくいくかどうかの分かれ目かもしれませんね。