「憧れの個室に格安宿泊」「車掌気分の体験も」

 現在は宿泊施設に改装された客車は、ブルートレインとしての現役時に「走るホテル」として人気を博していた。「憧れ続けていた車両に泊まりたい!」との一心で訪れる人は多い。例えば、「ブルートレインたらぎ」(熊本県)では、寝台特急「はやぶさ」(東京駅~熊本駅・西鹿児島駅間。09年廃止)の個室(B寝台)に宿泊できる。

個室タイプの室内個室タイプの室内 画像提供:ブルートレインたらぎ

 この客車が寝台特急「はやぶさ」として現役だった頃は、個室料金と、東京~熊本間の運賃・特急料金を加えると3万円近くかかった。これが「ブルートレインたらぎ」なら、1泊3140円(23年4月現在)で泊まることができる。「寝台特急だった当時は高くて利用できなかった」という人の宿泊も多いという。

 ブルートレインの象徴ともいえる相部屋「開放型4ベッドタイプ用車両」(上下段ベッドが2対の4人部屋)を体験するために訪れる人もいる。「一人旅ができる年齢になった頃には、ブルートレインは軒並み廃止になっていた」という現役時代を知らない若い鉄道ファンが、疑似乗車体験をするために訪れるケースもあるそうだ。

開放型4ベッドタイプの室内開放型4ベッドタイプの室内 画像提供:ブルートレインたらぎ

 各地の宿の中には、車掌室への立ち入りや、車内アナウンスのマイクやメロディーチャイムを鳴らすオルゴールの操作が可能な施設もある。もちろんこれらの行為は、国鉄・JRの車掌しか許されなかったことだ。他にも、車両先頭のヘッドマーク(車両の愛称を示す表示)や、「FOR TOKYO」などと掲げられた方向幕を眺めるもよし。各施設とも、旅行好き・鉄道好きなら一晩中でも楽しめる仕掛けが、至る所にちりばめられている。

現役当時のまま残されているブルートレイン車掌室の機器現役当時のまま残されているブルートレイン車掌室の機器。左下のスイッチを押すと車内にチャイムが鳴る Photo by Wataya Miyatake