経営課題はメンテナンスの費用と人手

「四国遍路の駅 オハネフの宿」「四国遍路の駅 オハネフの宿」 Photo by Wataya Miyatake

 最後に、ブルートレインの宿の経営面について探ってみたい。課題は、メンテナンスにあるという。各地の車両は新造から50年以上が経過しており、外装の色を保つ「青色20号」塗料の定期的な塗り直しが必須。各地ともボランティアやクラウドファンディングで費用と人手を賄っている。他方、「ブルートレインあけぼの」(秋田県小坂町)のように、補修費用の予算が町議会で否決され、改装・再開業が棚上げになる例も出ている。各施設は自治体の支援を仰ぐケースも多く、地域の理解が必要不可欠となっている。

 4月に開業した「四国遍路の駅 オハネフの宿」はその名の通り、四国88カ所霊場を巡る遍路向けの宿として、66番札所である雲辺寺に向かうロープウェー駅の駐車場で開業することになった。香川県は、「県外観光客の49.4%が讃岐うどん目的」(令和3年度・香川県観光実態調査)という土地柄でもある。「オハネフの宿」の横には、新たなうどん店を開業する準備をしており、もともと本業がうどん屋さんであるオーナー岸井さんの腕の見せどころだ。

「ブルートレインの宿」は総じて、「鉄道ファンだけでない、幅広い客層の支持」「地元の理解」「メンテナンスを支えるボランティア・関係者の存在」という三大条件が成立すれば、安定した経営が見込めるだろう。その意味で「オハネフの宿」は、「お遍路さんの拠点」「うどん」という付加価値がある。現在のところ厳しい船出となっているが、「ブルートレインの宿」の新しい展開に期待したい。