手頃な宿としてスポーツ合宿やライダーにも人気
「ブルートレインの宿」を利用するのは鉄道ファンだけではない。実は各地とも、シンプルな客室で大人数が泊まれる利点が受け、スポーツ合宿用の施設にも重宝されているのだ。
前述の「ブルートレインたらぎ」がある熊本県・球磨地方は、宿泊施設が中心都市の人吉市に集中している。多良木町は武道館や陸上競技場、野球場などを有しているにもかかわらず、町内の宿泊施設が不足気味だった。そこで、「合宿に対応できる格安の宿泊施設」を町で整備するにあたって、1両で50人近くを収容できる「ブルートレイン客車の改造」プランが採用された。
その想定通り、開業後は部活動の合宿利用がかなり多く、周囲のスポーツ施設の稼働率も大幅に上がったという。他に、周辺の公共工事関係者の利用も安定的にあるそうだ。
また、「ブルートレイン日本海」(岩手県岩泉町)は、東日本大震災の被害が大きかった三陸地方から内陸へ20キロほどの場所にある。もともとこの客車は、復興作業に携わるボランティアの宿不足を受けた地元NPOが「寝台列車ならすぐに宿泊施設として活用できるのでは」と、寝台特急「日本海」(13年に運行終了)の客車を買い取ったものだった。
しかし、車両が保管されていた岩手県盛岡市から岩泉町への移送費用のめどが立たず、クラウドファンディングで費用を賄ったうえで移設した。客車は岩泉町に譲渡され、鉄道ファンに向けた観光の目玉として宿泊営業を始めたという。現在は、1名宿泊の場合、1泊3600~4800円(繁忙期は4200~5600円)という手頃さもあって、ライダーズハウス(バイク利用者のための宿)としても人気を集めている。