正しい指摘でも組織の事情がある
(3)論理的にはあり得るが、現実的には不可能(だと皆が思っている)である
外部の、いわゆるコンサルタントがしがちな発言である。外部者が考えると、論理的にはあり得るものの、現実的には実行がきわめて難しいことがある。
同じグループ会社でありながら、過去のいきさつから絶対に協力しあうことのない2つの会社の共同事業は、論理的には十分可能だが、現実的には無理だ(と多くの人も当人たちも考えている)。BtoCで培った経営資源をBtoB向けに振り向けることも論理的には可能だが、社員の価値観や行動様式が決定的に変わらない限り実現不可能であったりする。
もちろん可能性自体はあるので発言する価値はあるものの、その実現可能性の見積もりが内部者と大きく異なることを理解しないまま安易に発言すると、「だから、コンサルタントなんか役に立たないんだよ」と言われてしまう。
(4)妥協案を蒸し返す
外部者の発言で、結構困るのが妥協案を蒸し返すことである。
多様な人々の利害関係が絡み合い感情的にもこんがらがった政治的な問題を、一つ一つ丁寧にほぐした上で、多くの人に妥協をしてもらい最終的にたどり着いた解決案のようなものがあるとする。この解決案に対して、外部者が過去の経緯を完全に無視した形で矛盾点を指摘することがある。
確かに、解決案には矛盾がたくさんあり、「ツッコミどころ」だらけだから、おかしいといえばおかしいこともある。とはいえ、それらを乗り越えてどうにか最終的に皆が妥協した案だから、実行するメリットは大きい。しかしながら、外部者ゆえにそうした経緯をよく知らないので、鬼の首を取ったように、矛盾を声高に叫ぶ。すると、いったん妥協した人々の視線が再び問題点に向かい始め、「やっぱりおかしい。やめよう!」という大惨事を引き起こしてしまう。
外部の人間によるこのような蒸し返しは、真面目な当事者たちにとっては大迷惑なのだ。こういう発言をする人に対しては「何を言うんだ。この人は!」という否定的な感情を喚起し、かく乱者として完全否定することになってしまう。
(5)内容は良くても内部者の顔をつぶす
外部者が新しい見解をもたらすことで、現在内部において主流となっている考え方の欠陥が明らかになったり、純粋に改善点が明らかになったりすることがある。これは、内部者にとって本来は歓迎すべきことであり、これら外部の視点を内部に取り込む価値は大変大きい。
しかしながら、内部者にとっては、自分たちの至らない状況を明白にすることと同義であり、(余計な)仕事が増える事態なので、もろ手を挙げて歓迎すべきこととは限らない。そして、よほど言い方に気をつけないと、内部者の顔をつぶすことになる。
残念なことに状況に配慮した発言ができる外部者は少ない。上から目線かつ配慮のない発言は、内部者の前向きな変革の気持ちをなえさせる。そして、慇懃無礼に「前向きに検討します」と返答されて終わりである。