1年契約の吉田麻也に残された
契約更新の条件とは
スコットランドのセルティックで出場機会を失っていたドイツ出身のセンターバック、モリッツ・イェンツが期限付き移籍で緊急加入。開幕からなかなか固定されなかった吉田のパートナーとして瞬く間にフィットし、失点禍が続いたシャルケの守備に安定感をもたらした。
1月29日のケルン戦を皮切りに8戦連続で負けなしをマーク。最初の4試合はスコアレスドローながらしぶとく勝ち点を積み上げ、続く遠藤航と伊藤洋輝が所属するシュツットガルト、浅野拓磨のボーフムと下位チームに連勝。さらに引き分けを二つ続けて、残留争いを一気に混沌とさせた。
ただし、本稿を執筆している4月25日現在、シャルケの順位はブンデスリーガ1部で18チーム中17位である。勝ち点差「5」の中で4チームがしのぎを削っている状況であり、本稿が公開されるころには降格圏を抜け出している可能性はあるものの、厳しい状況にあることに変わりはない。
1年契約でシャルケに加入した吉田の契約には、実は特別なオプションがつけられている。公式戦で25試合以上に出場し、かつシャルケを1部残留に導けば契約が自動的に1年間延長される。
4月下旬に左太ももの裏を痛めた吉田は、加入後初めて欠場を余儀なくされた。しかし、すでに3月18日のアウグスブルク戦で、リーグ戦だけで25試合出場を達成した。残された条件である1部残留をクリアすれば、ヨーロッパの舞台で刻んできた軌跡が来シーズンへ紡がれる。
対照的に1シーズンでの2部降格を喫してしまえば、8月には35歳となる年齢も相まって、ヨーロッパのトップレベルでのチャレンジにはピリオドが打たれる可能性が大きくなってくる。
下部組織から名古屋グランパスへ昇格した吉田は、09年の年末にオランダのVVVフェンローへ移籍。12年夏にステップアップしたサウサンプトンで実に7年半にわたってプレーし、さらに「ゴールに鍵をかける守備」を伝統とするセリエAのサンプドリアでも2シーズン半プレーした。
ブンデスリーガのシャルケを含めて、ヨーロッパの5大リーグのうち3つでプレー。サウサンプトンでプレーした154試合は、最高峰とされるプレミアリーグにおける日本人選手最多出場記録でもある。新しい選手たちが吉田の記録を塗り替えていくには、まだまだ時間がかかるといっていい。
日本を飛び立ってから今年で実に14年目。自身のキャリアを「まだ現役なので振り返るのは早いかなと思いますけど」と苦笑しながら、吉田はこんな言葉とともに表現したことがある。
「誰もやっていないことにチャレンジしたい、という気持ちがずっとありました。そこに魅力とモチベーションを感じてきた結果として、少しながら扉が開いて次の世代の選手たちがヨーロッパに来られるようになった。彼らが普通にプレーできているのが、見ていてうれしいですね」