吉田麻也や長友・酒井は
3月シリーズで代表選外に
数多くの日本人選手がヨーロッパに挑んできたなかで、センターバックは極めて希有(けう)な存在だった。中澤も闘莉王もヨーロッパを経験していない。吉田よりも前では、フランスのマルセイユやスイスのバーゼルに所属した中田浩二、オーストリアのザルツブルクに所属した宮本恒靖ぐらいだろうか。
しかし、前方に誰もいない荒野を吉田が必死に切り開き、大きな背中を追うように冨安や板倉、伊藤が続いた。先の3月シリーズに招集された22歳の瀬古歩夢はスイスのグラスホッパーで、追加招集された25歳の町田浩樹はベルギーのユニオン・サンジロワーズでそれぞれプレーしている。
その代わりというべきか。若手や中堅で新戦力が招集された3月シリーズは、長友佑都(FC東京)や酒井宏樹(浦和レッズ)、そして吉田らが選外となった。森保監督はこれまでチームを支えてきたベテラン勢に感謝しながら、その上で「彼らは計算できるところが大きい」と語っている。
指揮官の言葉を読み解けば、経験豊富で安定感もあるベテラン勢の力が必要なときにはいつでも招集できるし、それまでは選手層をさらに広げる意味でも新戦力を試していくと受け取れる。
前回ロシア大会後に代表引退を表明した長谷部誠(フランクフルト)とは対照的に、吉田は代表活動に関しては明言を避けている。クロアチアに敗れた翌日にカタールの地で語った「まあ、なるようになるでしょう」からは、自分からは日の丸に別れを告げない意思が伝わってくる。
遠藤保仁の152、長友の142に次ぐ歴代3位の126キャップを獲得。特にキャプテンを務めた第1次森保ジャパンへは「プレッシャーを楽しんでいる自分がいた。チーム内の立場が自分を成長させてくれた」と感謝している吉田は、同時に第2次森保ジャパンの未来も見つめている。
「日本サッカーがさらに発展していくためには、絶対に次のアジアカップを取らなきゃいけない」
吉田が代表に定着した11年大会を最後に優勝から遠ざかっているアジアカップは、来年1月に再びカタールで開催される。アメリカとカナダ、メキシコで共同開催される26年の次回ワールドカップでベスト8以上を目指す日本にとって、3大会ぶり5度目のアジア制覇はノルマといっていい。
続投した真価も問われる森保監督から、いつ復帰を要請されても応えられるように。そのためにもレベルの高い舞台でのプレーを望む吉田は、5月27日のライプツィヒとの最終節まで続くブンデスリーガ1部の残り4試合で、主語を「僕は――」に固定しながら最後の力を振り絞っていく。