やはり、学校数学とビジネス数学は違うのです

 一方、企業研修でワークをさせると、このような質問が多く飛び出します。

「電車の車体寸法って、いったい何メートルですか」
 「円周率は3.14か3、どちらを使えばいいですか」
 「ゴルフボールって、直径何センチですか」


 私の切り返しは、こうです。

「教えてあげてもいいけれど、それで1分間で答えを出せるの?」

 私たちは、学生時代の数学で問題を解く作業を数多くこなしました。
 そして(ここからが大切なのですが)、その問題には必ず唯一の正解があり、必ずその正解に辿りつくための素材(数字や条件)がキチっと揃っていました。
 学校数学でそれを常識として数字教育をされてきた私たちは、どうしても正確に、キッチリと、唯一の正解を導き出そうとします。先ほどの3つの質問が、それを端的に表しています。

 しかし、どうでしょう。ビジネスシーンにおいては、正解は唯一でしょうか。解を出すための素材は必ず揃っているのでしょうか。答えは、否です。 
 正解なんて誰も知らない。アプローチする素材も用意してもらえない。そんな中で、自ら数字を使い、見えないものごとを数字で捉え、仕事を進めることが私たちにとって必要な能力ではないでしょうか。

 例えば、富士山の頂上で売られているカップラーメンが700円だとすると、これは高いのか、安いのか。
 この問いに正解はありませんし、何かを計算することで解が導かれるものでもないわけです。しかし、700円という価格が設定されているということは、何かしらの根拠をもって、このカップラーメンの価格を数字で捉え、意思決定をしているということでしょう。

■学校数学   = 数学の問題を解く 
 ■ビジネス数学 = 数字と論理を使う 


 大切な言葉がやはりここでも登場しました。本連載の第1回でも登場した
「解く」ではなく「使う」ということです。ご説明したように、学校数学とビジネス数学にはやはり劇的に違うポイントがあるのです。