相手任せの運用はトラブルのもと

 この「適合性の原則」をめぐって争うということは、ルールが守られていなかった、つまり顧客からすると「十分な説明を受けていなかった」「思ったような商品ではなかった」と訴えているということです。

 この場合、ほとんどの顧客が営業担当者に提案されるがままに投資を開始していて、損失が出てきたときになってはじめて、購入した商品のリスクや仕組みを詳しく知った、ということが多く、ある意味「騙された」と感じてトラブルに発展しています。

 大切な資産を信頼して任せられる相手は、年齢とともに重要度が増していきます。自分が忙しいときでも、判断力が落ちてきても、しっかり資産管理してくれる担当者が、継続して的確にフォローしてくれる状態が理想です。しかし、はたして金融機関の担当者は、理想の相手でしょうか? 大手金融機関では転勤や異動がありますが、顧客にとっては担当がコロコロ変わるのは不安でしかありません。

 もちろん「付き合いの長い金融機関が勧めてくれるから」「担当者が熱心に話を聞いてくれたから」という理由で運用を任せたり、お付き合いで取引をしたりという理由も理解はできます。人付き合いをしていれば情もわきます。

 しかし、そうして相手任せの運用をした結果、「そんな話は聞いていなかった」「そんな商品とは知らなかった」とトラブルに陥ることもあるのです。事実、相場の大きな下落の度に、多大な損失を抱えてしまった方を私はたくさん目にしてきました。こんな現実があることも知っておいてほしいと切に願います。

 そうなる前にぜひ、ご自分の大切な資産をどうやったらうまく活かすことができるのか、守れるのかを考えていただきたいと思います。