シニア世代で「やってはいけない資産運用」が猛威を振るう

 金融機関が顧客に勧める商品やサービスは、担当者レベルで自由に選べるわけではありません。前述した通り、担当者には会社から課せられた予算というノルマがあります。会社として、あるいは支店として「今期はこれを売っていこう」「今月の販売手数料○千万円とるぞ!」といった計画や目標が設定されているのが普通です。そうした計画、目標にどれだけ貢献したかで担当者の社内評価やボーナスが違ってきます。ある意味、サラリーマンの掟としてそれに従うのはごく自然なことです。

 彼らにとって、数千万円という退職金や、コツコツ貯めてきた貯蓄を持つシニア世代は超優良顧客。悪くいえば営業ターゲットです。

 いかがでしょうか。年々ややこしくなる商品、窓口や担当者に頼りがちなシニア世代、多額の資産を持ち営業のターゲットになりやすいシニア世代。この3つが重なり、シニア世代の間で「やってはいけない資産運用」が猛威を振るっているのです。

 シニア世代の安定運用の意向と裏腹にハイリスクな投資に偏ってしまって、相場の下落で大損する。リスクは抑えていても運用コストの高い商品やサービスでジワジワと費用がかさんで資産を減らす。そんな提案がいまだにまかり通っています。

 これは個人の資産運用提案に関わる金融業の営業員(本支店のセールスなど)なら知らない人のほうが少ない話ですから、問題の根は深いと言わざるを得ません。

 顧客であるシニア世代も、景気や相場が好調な間は「うまくいっているな」と気にも留めませんが、株価の大きな調整などの混乱が続くと、途端に不安に襲われます。そして、定期的に送られてくる運用報告をあらためてよく見ると、資産が全然増えていなかったり、むしろ目減りしたりしていることに気づくのです。

 慌てて担当者に問い合わせても「とりあえず様子を見ましょう」といった返事しかなかったり、これまでの担当者が転勤していなくなったりしていると、ますます不安は大きくなります。

 その段階まできてはじめて、担当者以外の専門家に意見を聞いて確かめたいと思い始め、私たちのような金融機関から独立したアドバイザーに相談にくるのです。