民主主義国家の懸念は
アメリカの高齢すぎる大統領

 では、民主主義国家の要、アメリカはどうだろうか。アメリカは、これまで強く促してきた日韓両国の関係改善で、日本と韓国を「対中国」の「矛」にも「盾」にもできるようになった。

 また、5月1日、バイデン大統領とフィリピンのマルコス大統領が会談し、台湾有事などをにらみ、米比両軍の分担まで決める軍事同盟的な関係を構築できたことも、バイデン外交としては大きな成果といえるだろう。

 日米韓の結束にフィリピンを加え、中国が嫌がる「アジア版NATO」の素地が出来上がったことになるからだ。

書影『日本有事』(集英社インターナショナル新書)『日本有事』(集英社インターナショナル新書)
清水克彦 著

 ただ、アメリカは、2024年11月に実施される大統領選挙に不安が残る。4月25日、動画で再選を目指し出馬を表明した御年80歳のバイデン大統領には、民主党支持者からも“Don't Run Joe”(出馬するな、ジョー)といった声が上がり続けている。ワシントンポストとABCテレビが5月7日に発表した調査では、約7割が高齢を不安視している。

 仮に、次期大統領選挙が、やはり76歳と高齢の共和党・トランプ前大統領との再戦になれば、「どちらも超高齢者で嫌。もううんざり」という声が広がり、アメリカ社会は、「分断社会」どころか方向性を見失い「液状化」してしまう恐れがある。

 このような国際情勢の中、G7サミットは開催される。前述したように「決める人間」「前に進む人間」を目指す岸田首相が、議長国としてどのような立ち回りを見せるのか。そのことは、今後の日本の政局、そして中国の動き、アメリカの近未来にも影響を及ぼすことになる。

(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師 清水克彦)