つらい技能実習から見て難民申請は希望だが…
日本の技能実習制度が「日本人がやりたくないブラック労働は外国人に」という考えに基づいていることは今更説明の必要もないだろう。外国人を、どんな辛い仕事でも安い賃金でニコニコ働く「おしん」のような存在だと勘違いした雇用主によるさまざまな人権侵害が、全国各地で報告されている。
そのため、国連の人種差別撤廃委員会は20年、借金返済のため労働を強いられる「債務労働」のような状況だとし制度の見直しと、政府の徹底した監督を要望している。
日本では「今度来たベトナム人は日本語もうまいし、働き者だなあ」なんてホッコリとした話にされがちな技能実習制度は、なんのことはない国際社会では「人身取引」「現代の奴隷制」なのだ。
ただ、残念ながら日本政府は、どれだけ国際社会から批判を受けても、この技能実習制度を死守しなくてはいけない。
日本の企業の99.7%を占めて、雇用の7割を担う中小零細企業の多くは、「低賃金」を前提としたビジネスモデルだからだ。
しかし最近、若者たちが続々と「闇バイト」や「賃金の高い国でワーホリ」に流れていることからもわかるように、今の日本の若者はそのような「低賃金重労働」は敬遠する。
そうなると、このような不人気業界を支えるのは、技能実習生しかないというわけだ。
ただ、ここに日本政府がごっそりと見落としている「盲点」がある。それは一言で言ってしまうと、「日本人が嫌がるような仕事は、ベトナム人だろうが、中国人だろうが、やりたくない」ということだ。だから、逃げ出す。
しかし、「現代の奴隷制」と評されるように、技能実習生はその雇用主のもとで働くということで日本への在留が認められている。無断で職場放棄して自由に生きようとすると、「不法滞在外国人」となってしまう。そこで技能実習生たちに利用されていたのが、「難民申請」なのだ。
現在は認められていないが、実は18年まで、技能実習生が難民申請すると、その申請をして6カ月後から就労が認められてきた。職種や労働時間の制限もない。難民申請の結果が出るまでの平均2年半、国からの十分な支援はないため、自分で働かないと生活ができないからだ。
我々の感覚では、「ふーん、まあそうでしょ」という感じだが、技能実習生からすればこんな「優遇措置」はない。奴隷契約のような形で、決められた雇用主に低賃金で働かされるわけでもなく、好きな仕事で、好きなだけ働ける。つまり、技能実習生にとって、難民申請は2年半の「就労ビザ」が得られるようなものなのだ。
難民認定の法的支援や、難民の就労支援をしている認定NPO法人・難民支援協会はホームページで、「技能実習生と留学生の一部が、日本で働き続けるために難民申請をしています」と次のように説明している。
今回、日本政府が難民認定をなぜ厳しくしたのかというと、このような技能実習生や留学生から「偽装難民」になろうという外国人を厳しく取り締まるという意味もあるのだ。