面白くないのに「爆笑」を
付ける人の意図とは

 ここで椎名氏のゼミ生(前出石毛さん)が集めたLINEの事例を見て、利用意図を探っていこう。ここでは主に「(笑)」と「笑」が使われている。いずれも、日常で一度は目にしたことがある会話だ。

<(1)女性同士>
A:ディズニーの後どっかで飲む?(笑)
B:ありだよ(笑)
A:そうします?久々だし、はしゃごう、たまには
B:面白いね(笑)

「(1)は相手への依頼や提案を行う場面ですが、『(笑)』で語気を緩和し、相手が断れる余地を残していることがわかります」

<(2)男性同士>
A:教員免許取得の申し込みって●月▲日で大丈夫?
B:大丈夫。Aは教採(教員採用)の申し込みネットでやる?持参する?
A:あざす!ネット!実習期間中に持って行くの大変だから(笑)
B:あ、そうかAは期間中か(笑)
A:そうそう(笑)

「(2)の前半は業務連絡なので『(笑)』は不使用です。後半は気楽な雑談であり、仲間意識や内輪の印など、好意や相手との距離の近さを示すために『(笑)』が使われていると推測できます」

<(3)男性同士>
共通の友人であるXさんとYさんが別れそうという話の流れ

A:でもXの性格はおそらくなかなか治らないからね笑 Yちゃんが合わせていくしか無理そう笑
B:爆笑
B:だよね、Xも悩んでたけどこりゃ別れた方がよさそう、、

「(3)の場合は悪口に聞こえそうな主張を緩和するために『笑』が使われています。また、『(笑)』の変形である『爆笑』が使われているのも特徴的です。この話の流れでは、『爆笑するほど面白い』という意図は考えにくいので、主張に対する激しい同意や会話を盛り上げるために『爆笑』というワードが使用されているのでしょうね」

<(4)男女の会話:Mは男性、Wは女性>
自主映画についての会話

W:今度女子会に参加してくださいよ笑 そんで色々決めましょう(笑)
M:女子様が良いなら参加するわ~(笑)

W:なんなら脚本して出演者もやってよ(笑)
M:出たがりだからやるよ(笑)

「女子会への参加の部分は(1)と同じように依頼や申し出の緩和です。最後の一文は自虐的なニュアンスを表現し、相手との距離を近づける意図で『(笑)』が使われています」

 このようにLINEなどで使われる「(笑)」には、語気の緩和、好意や仲間意識の提示、主張の緩和、自虐の演出などの使用意図がある。