「ありがとう」と言い合える組織づくり
前川孝雄 著
人は、「自分はお客さまに貢献できている」「社会の役に立っている」「自分の仕事が誰かの笑顔につながっている」と感じられるからこそ、仕事を頑張り続けることができます。まさに働きがいです。ただ現実には、部下が「自分が役立っている」と実感できる機会は、そう多くはありません。お客様にとってサービスに不満があると、ほぼ必ずクレームになりますが、わざわざ「ありがとう」とは伝えに来てくれないからです。
そこで、「自分たちが役立っている」と感じられる場面を演出するのも、上司の大事な仕事になります。お客様や部下同士で「助かった」「ありがとう」という感謝の言葉が行き交うように、仕掛けをつくるのです。やり方は非常にシンプル。朝礼や夕礼などのミーティングで、お客様からのクレームやミスの共有だけでなく、お客様に喜んでもらえた情報や、メンバーに感謝したエピソードなどを共有するコーナーを設けるのです。これは、週に10分でも効果があります。
私が注目するある通販会社では、毎日の朝礼でお客様から「ありがとう」と言われたエピソードを共有しています。もともとクレームを受けやすい業態ですが、「ありがとう」の共有等の取り組みでお互いに感謝し合うポジティブな組織風土ができていますから、組織内にネガティブな空気は蔓延しません。
人は「ありがとう」と言われると、それに借りを感じ、相手に「ありがとう」を返したくなります。心理学でいう「返報性の法則」です。部下同士が「ありがとう」と言い合える組織なら、プラスの連鎖が起きるのです。上司の皆さんには、この連鎖を起こすために組織の中で相互に感謝する風土が生まれる仕掛けを考え、実践することをお勧めします。