「子どもには、少しでも体によいものを食べさせたい!」ですよね。
でも、ごはんは毎日のこと。なるべくシンプルで簡単に済ませたいものです。
この連載では、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の小児科医でもある伊藤明子先生が、最新の医学データをもとに「子どもが食べるべきもの、避けるべきもの」をご紹介します。
不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験から、本当に子どもの体と脳によい食事がわかります。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。
老化と病気のなりやすさは関係してる?
私たちは生まれた瞬間から「酸化」しています。これは酸素によって起きる現象で、地球に暮らす生き物としては避けられない現象です。そして酸化は老化です。
酸化を進めるものは炎症物質と、温度と光(と時間)なので、食べ方や暮らし方によって酸化を進めることもあれば、遅らせることも可能です。抗酸化物質をたくさん含んだものを食べると酸化が抑えられ、老化を遅らせることができ、病気のなりやすさも抑えられます。
おすすめの抗酸化食材は?
スパイスやハーブにはとても強い抗酸化力があります。抗酸化力とは、炎症を抑え老化を遅らせる力のことです。たとえば次の食材です[*88]。
●西洋系
コショウ、シナモン、オレガノ、ローズマリー、タイムなど
●和食系
ワサビ、シソ、ショウガ、ミョウガ、セリ、ネギなど
●中華系
八角、鷹の爪など
●インド系
フェンネル、クミンなど
これらのスパイスやハーブは洋の東西を問わず、抗酸化力が高いので、子どもの食事にも幼児期から少しずつ取り入れるとよいでしょう。
食品に含まれるポリフェノール類やファイトケミカル(植物に含まれる有用な化学成分)、ビタミン、ミネラル、そしてアミノ酸も抗酸化力をもちます。
ワサビにはペルオキシダーゼ、ショウガにはショウガオールやジンゲロール、シナモンにはプロアントシアニジンなどが含まれています。
どれくらいすごい抗酸化力があるの?
2010年に米国農務省(USDA)が、各食材がもつ抗酸化力を数値化し、リストにして発表しました。その上位を占めるのがオレガノ、タイムなどのスパイス、ハーブです[*88]。
ほかにもクローブ、ナツメグ、シナモン、バジル、パセリ、ローレル、ローズマリー、フェンネル、コショウなどたくさんのスパイス、ハーブがリスト入りしています。
欧米の食材が対象なので、シソやワサビは含まれていませんが、これらも抗酸化力が高いことは間違いありません。
このリストそのものは、数値がサプリメーカーや食品業界関係者によって誤用されていることと、これらの食材が人体に摂取されたときの作用と効果を表すものではないとの見解から、2012年に公開文書から削除されました。
その後も、食材の抗酸化力や人体での酸化ストレス(酸化した状態)を測定する技術が進み、抗酸化力の高い食材の摂取が、人間においても酸化ストレスを下げる力になることが研究で示されています。
苦手な場合はどうしたらいい?
フレッシュなスパイスやハーブ、薬味は飾り程度に使うのではなく、ふんだんに使うことをおすすめします。もちろん、ワサビの抗酸化力が高いからといって大量に摂ればよいというわけではありません。
また、ドライハーブのパウダーなど、一部のハーブはかなりパワフルなので、入れすぎると気分が悪くなることもあるので、注意してください。
子どもは苦いものが苦手と決めつけずに、いろいろな食材を少しずつ調理に取り入れて、食べられるようにすることが、豊かな食事と健康につながっていきます。
あせらず、少しずつ取り入れていきましょう!
このほかにも『医師が教える 子どもの食事 50の基本』では、子どもの脳と体に最高の食べ方、最悪の食べ方をわかりやすく紹介しています。
(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本』から一部抜粋・編集したものです)