すでにリーグ戦で8得点
久保建英はなぜ覚醒した?
再び期限付き移籍を選んだ場合でも、過去の3年間と変わらない数字ならばマドリード側から見限られかねない。さらに久保は「17歳や18歳の選手も出てきているし、個人的には21歳が若いと思っていません」という危機感も抱く。だからこそ、4年目を一世一代の勝負と位置付けた。
「いままでのラ・リーガにおける自分に慣れることなく、ここからはまた違う段階に入って、もうひとつ上のステージで自分のプレーと向き合っていけたらいいかなと思っています」
イマノル・アルグアシル監督の下、2019-20シーズン以降は6位、5位、6位とラ・リーガ1部の上位につけていたソシエダへ、敵として対戦してきた久保はポジティブな印象を抱いてきた。
「攻撃がとても流動的で厚みを持っていて、基本的に自分たちで試合をコントロールしていくチーム。野心と意欲にあふれていているし、自分の特徴を出すにはすごく適しているのかな、と」
果たして、2トップの一角や2列目でレギュラーを獲得した久保は、昨年に行われた前半戦で2ゴールを挙げた。そして、カタールワールドカップ後に再開された後半戦だけで、過去3年間の合計得点数と同じ6ゴールをマーク。ピッチ上で圧倒的な存在感を放ちながら、ソシエダをけん引し続けている。
これまでのラ・リーガ1部における日本人選手の最多得点記録は、エイバル所属だった乾貴士(現清水エスパルス)が2017‐18シーズンにマークした5ゴール。これをあっさり更新しただけでなく、直近のリーグ戦となる13日のジローナ戦を含めてアシストも4つマークしている。
何が久保を変えたのか。ひとつはカタールの地で初めて臨んだワールドカップで、胸中に募らせた不完全燃焼の思いがある。森保ジャパンがベスト16進出を果たし、日本中を熱狂させたなかで久保はドイツ、スペイン両代表戦で先発するも、ともにハーフタイムでの交代を告げられた。
さらにクロアチア代表とのラウンド16では、発熱による体調不良で欠場を余儀なくされた。PK戦の末に敗退した翌日の取材対応。森保ジャパンの力になれなかったワールドカップを、久保は「半分は黒歴史みたいな大会でした」と自虐的に振り返りながら、さらなる成長を誓っている。
「よく言えばチームのために戦えたけど、悪く言えば自分のやりたいプレーができなかった。チームのタスクを実践しながら、もっと自分のプレーができると思っていたけど、圧倒的な個の力がないと厳しいと思い知らされた。
自分の見積もりが甘かったというか、勘違いをしていた。次のワールドカップで僕は25歳になっている。25歳ならば代表の中核になっている選手がどこの国にもいる。自分がそういった存在になれるように、最も大事なのは結果だと思って頑張っていきたい」