圧倒的自由度は今作も健在
不穏だった「クラフト」はさらに面白くなる要素
物語最序盤を終えると、自由度がビッグバンのごとく弾けて広がる。メインストーリーと呼ばれる大目的だけ与えられて、広大なマップにいきなり放り出されるのである。一応メインストーリーを進めればいいはずなのだが、プレーヤーが放り出されたマップを見わたすだけで「あそこのあれはなんだろう」と好奇心をくすぐるポイントがいくつも見つかるような、ワクワクに満ち満ちている。
かくして『ブレワイ』と同等のワクワクは保証されたわけだが、『ティアキン』をさらに神のゲームの領域へと一段押し上げているのが、前述のクラフト要素である。
クラフト要素はゼルダの伝説シリーズの真骨頂である“謎解き要素”を新次元に至らしめる画期的なシステムである。シリーズでは元から、ひとつの謎に対していくつかの解き方が可能な場合が多かった。しかしクラフトが導入されたことで、解き方の数が格段に増えた。たとえば川を渡って向こう岸に行きたい場合、イカダを作る・橋を架ける・飛行機を作るなどのアプローチがあって、どれを選ぶかもプレーヤーのひらめき次第である。
そして解き方が多いから難易度が下がるかといえば、決してそんなことはなく、どれも手ごわく感じられる絶妙なあんばいだった。だから、自力でたどり着いた自分だけの解き方がこの上なく愛しく誇らしく感じられ、ついつい解き方をSNSでシェアしたくなる。
クラフトは謎解きだけでなく、冒険になくてもいいアイテム作りに使ってもいい。SNSで現在確認したところだと、物理法則を無視したありえないほど長大な橋を作って持ち歩く人や、ガンダムのような乗り物を作って敵をやっつけている人がいるようである。
アイテム自作にこだわりが出るのは皆同じなようだ。たとえば、その湖を渡るためには、簡単なイカダがあればいいだけなのに、「モーターを満載にした超速い船を作ろう」とひらめいたら延々と作ってしまうようなことを、すでに筆者は『ティアキン』内で何度も体験している。これは時間泥棒のゲームなのだ。
近年「サンドボックスゲーム」と呼ばれるジャンルが人気を博している。サンドボックスとは砂場のことで、砂場のごとき創造性と自由度を備えているのが「サンドボックスゲーム」の特徴である。代表的なものには『Minecraft』があり、“無目的かつ自由を楽しむ”という点では『あつまれ どうぶつの森』もこのジャンルに該当する。
『ブレワイ』時点で、すでにかなり自由だったのでサンドボックスゲーム的ではあったが、クラフト要素を備えた『ティアキン』はサンドボックスゲームとしての側面を一段と強めた――つまり、さらに没頭して遊べるフックを備えてしまったというわけである。
なお、筆者はマップの尾ひれはひれに夢中になって、メインストーリーはそっちのけになっている。ただ、ちょっと進めたところ、メインストーリーの方も相当ワクワクさせてくれる意匠になっていた。ゲーム内でどの方向に向かってもワクワクが満載の『ティアキン』は、無事神域の面白さを備えたゲームとなってくれそうである。