とてつもない精度で
停車した試験専用車両
さて筆者も参加した報道公開は、営業運転が終了した午後11時50分過ぎ、報道陣が集まったホームに試験専用車両であるN700S「J0」編成が入線したところから始まった。一行は14号車と15号車に分乗し、午前0時19分に浜松駅を出発し、ATOによる運転がスタートした。
列車はするすると加速し、すぐに速度は時速200キロ近くに達した。車内に設置されたモニターに運転席の様子が映されたが、運転士は出発ボタンを押した以外、一切の操作をしていない。そうしているうちに掛川駅付近に設定された徐行区間に差し掛かり、列車は緩やかにブレーキをかけ時速170キロ、次いで時速120キロまで減速した。
徐行区間を過ぎて再度加速した列車は、静岡駅が近づくと時速30キロまで減速。運転士が確認ボタンを押すと停車態勢に入り、ショックなくピタリと停止した(現在の仕組みでは確認ボタンの操作が必要だが、完全自動化する予定とのこと)。掛川駅は定時で通過し、静岡駅は2秒の早着。所定停止位置から0.9センチ手前に停車した。とてつもない精度である。
「さすがにこれはできすぎですよね?」と問う筆者に対し、担当者は苦笑いしつつ「ここまでではないが、いつも良い数字を出します」と答えた。実際、手動運転において許容される停止位置の誤差がプラスマイナス1メートルなのに対し、ATOはプラスマイナス50センチを基準にしており、実際の精度はそれよりもよいそうだ。なお復路の浜松駅では12センチ手前に停車した。
もっとも既に実用化されているATOも同程度の精度であり、車両が大きく、長い新幹線であっても技術的なハードルは基本的には変わりがない。むしろこのATOの最大の特徴は、これまでのものと全く異なる発想で設計されている点にある。