東海道新幹線が目指すのは
運転士が乗務する自動運転
ところで報道公開の前日である5月9日に、JR東日本は2030年代半ばにもJR西日本と協力して上越・北陸新幹線にATOを導入し、運転士を乗務させないドライバレス運転を開始すると発表した。
鉄道の自動運転にはGoA(Grades of Automation)という指標があり、普通の鉄道がGoA1、運転士が乗務する自動運転はGoA2、車掌は乗務するが運転士を置かない(ドライバレス運転)のがGoA3、ゆりかもめなど乗務員を一切乗せない自動運転がGoA4に分類される。
東海道新幹線が目指すのはGoA2であり、上越・北陸新幹線はGoA3だ。前者は2028年頃から、後者は2030年代半ばという若干の時差はあるが、東海道新幹線の目標地点に物足りなさを感じる人もいるだろう。いずれはGoA3も視野に入れているのだろうか。
こうした疑問に対し、辻村厚常務執行役員新幹線鉄道事業本部長は、JR東日本の動きは把握しているとしながらも、「新幹線にはそれぞれ(運行本数や利用者数の違いなどの)特徴がある。東海道新幹線としては異常時に迅速に対応するため、運転台に運転士を乗せたいと考えている」として現時点ではGoA3は想定していないと述べた。
一方でJR東海は、東海道新幹線全駅へのホームドア設置が完了した時点で、車掌が行うドア開閉と安全確認を運転士に移管するなど、乗務員の業務体系を見直す予定で、業務改革を通じたコスト削減を進める予定だ。
JR東海関係者は体面上、手動運転と自動運転の優劣には踏み込みたくない様子ではある。だが、今回のATOは運転士の手動運転を再現するのではなく、機械にしかできないアプローチで「理想の運転」を目指す装置である以上、もはや比較は成り立たない。機械の方が向いている仕事は機械に任せて、人間は人間にしかできない仕事に集中する。それが今後、鉄道が目指すべき道なのだろう。