子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では本書の内容から、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。

世界標準の子育てPhoto: Adobe Stock

親の仕事は子どもの自尊感情を守ること

 子どもの自尊感情を育てるには、良い面も悪い面も含めて、あるがままの子どもを受け入れなければいけません。

 たとえば「走り回りたい!」というのは多くの男の子にとって自然な欲求です。それを「走っちゃダメ!」と親から制限されると「否定された」と感じるのです。

 これは、子どもを放任しなさいと言っているのではありません。

 もう少し子どもの自発的な行動を周囲の大人がおおらかな目で見守ってほしい、ということです。

 そもそも子どもというのは「まわりに迷惑をかけて成長する」のです。

 世の中のルールも常識も知らないのですから、失敗するのがあたりまえです。その失敗を通して自分の行動をコントロールすることを「自分で学ぶ」のです。

「走っちゃダメ!」と親から言われてしぶしぶ走ることをやめるのと、モノを壊してしまったり、転んで痛い目にあって走ることをやめるのでは、子どもの自尊感情の発達に違いが生まれます。

 走り回る子どもには、「◯◯は乱暴だとみんな言うけど、ママ(パパ)は◯◯は元気いっぱいですごいと思う。元気な◯◯ちゃんが大好きだよ」と伝えます。その上で、「でもね、走って良い場所と悪い場所があるんだよ」とやさしく丁寧に教えてあげてください。

  頭ごなしに「走っちゃダメ!」と言うのではなく、きちんと言葉を尽くして説明すれば、子どもは自尊感情を保ちつつ、自分の行動を自分でコントロールできるようになります。

「何があってもあなたの味方」「決してあなたを否定しません」「そのままのあなたが大好き」と、ありのままの子どもを受け入れるメッセージをもっとたくさん伝えてください。

 すると、子どもは自分を肯定的に捉えられるようになり、自分を好きになれるのです。

 自尊感情は、変化する時代に対応していくための「チャレンジ精神」「楽観性」「立ち上がる力」の源となります。

 謙遜を美徳とする日本には「うぬぼれ」や「自意識過剰」は悪いことであるという考えがあります。

 しかし、子どもが自分のことを好きになれなければ、自分を大切にすることも、他人を大切にすることもできません。

 特にこれからの競争社会を生きる子どもは「自意識過剰」くらいでちょうどいいと思います。

 スポーツ選手、会社員、経営者、アーティスト、どんな仕事でも、競争が激しくなるほど自信がつぶれやすく、足を引っ張る仕組みが山ほどあります。

 大きな挫折を経験した時、子どもの心を支えるのは「あなたが大切な存在である」「あなたには価値がある」「あなたはあなたのままでいい」という、親からもらってきたメッセージです。

失敗しても、欠点があっても、トラブルを起こしても、「決してあなたを見放さない」というスタンスが、子どもをタフにします。

 まわりの目を気にして「ダメダメ」を繰り返したり、他の子どもと比較をするのは、子育てでは絶対NGなのです。