強みを見せつけた三菱商事の洋上風力発電コンペ
EXの中でも注目を集めているのが洋上風力発電だ。三菱商事は、日本の電力関係者を驚かせる象徴的な出来事を成し遂げた。
さかのぼること20年11月、政府は秋田県沖と千葉県沖において、三つの洋上風力案件を公募した。原子力発電所の稼働が遅れるわが国にとって、再成可能エネルギーをいかに増やすかは、産業競争力、経済安全保障体制にかなりの影響を与える。
台湾海峡の緊迫感の高まりやウクライナ紛争の長期化懸念などを背景に、わが国に直接投資を増やす企業も増えている。台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子は良い例だ。そうした海外企業が安心して長期に事業を運営するためにも、洋上風力を用いた発電体制の強化は、わが国のEXの切り札といっても過言ではない。
公募の結果、3区域のすべてで三菱商事を中心とする企業連合が事業者に選定された。日本には、洋上風力に必要な大型風車を生産するメーカーがない。だから三菱商事は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や米Amazonなどの協力を取り付けた。
GEなどが製造する機器や設備を用いて洋上発電を行い、その電力をAmazonなどの顧客が消費する。川上から川下までをつなぐ事業体制を早期に確立できる計画に加えて、三菱商事は競合相手を引き離す低料金などを提示したのだった。
総合商社の強みは、世界中に情報網を張り巡らせていることだ。それをベースに、収益増加が見込まれる分野に経営資源を再配分して需給のマッチングを図れば、新しい技術や理論を導入して収益性を高めることができる。三菱商事はそうした強みを、資源や機械、素材などの分野で発揮してきた。そして今は、洋上風力発電や鉱山での再エネ電力の利用増などに結びつけているというわけだ。