今回の記事では、日本社会で退職者を裏切り者と考える会社と大切に考える会社がある理由とその変化、そして転職が当たり前になった時代のアルムナイネットワークの意味についてまとめてみたいと思います。

 私の個人的な経験からお話しすると、私が最初に所属したコンサルティングファームでは、少なくとも25年前までは他のコンサルティングファームに転職した人間は裏切り者と認定されていました。

 外資のコンサルファームなので社員の大半は日本の大企業からの転職者です。当時は日本企業は終身雇用が当たり前の時代で、コンサルファームに転職してきた段階で前の会社からは裏切り者扱いされた社員も少なくなかったと記憶しています。このあたりはその会社の社風もありますが、本人が辞めた際の経緯によるケースも多々あったようです。

 特に印象に残っているのは中堅社員で比較的後輩の面倒見もよく、周囲から慕われていたコンサルタントが競合他社に転職したときのことです。

コンサル業界は90年代後半から
「アルムナイ歓迎」にチェンジ

 私がまだ20代だった頃の話です。

 その直後の社員集会で幹部から、「個人的な知り合いも多い業界ではあるけれども、プロフェッショナルとして仕事をする以上、競合するコンサルティングファームの社員とプライベートで食事をしたりするのは気をつけるように」とお達しがありました。

 その際に、「付き合い方次第では自分の評価に影響する」とまで言われたので、あとでこっそりとどういう意味なのかをパートナーの一人に尋ねたところ、「あいつとはもう付き合うなという意味だ」と厳しく言われたことを覚えています。

 90年代後半になって、わたしのいた会社ではグローバル本社のお達しで日本でもアルムナイパーティーが開催されるようになりました。その時も当初は裏切り者をパーティーに呼ぶか呼ばないか幹部が議論したぐらい、競合への転職についてはピリピリした空気がありました。

 最終的には、その議論をしていた幹部たちがごっそりと移って新しいコンサルファームを立ち上げたうえで、堂々とアルムナイパーティーに顔を出すようになり、今では当時の空気はなくなったようです。

 私もその時期にアルムナイになったのですが、退社して初めて知ったのは競合コンサルのアルムナイネットワークがとても強固だということでした。ちなみに競合コンサルとは、アクセンチュアのことです。

 当時の私はネットベンチャーに転職して、その仲間にはコンサルファーム出身者が何人かいました。そのひとりがアクセンチュア出身だったのですが、彼がこっそりアクセンチュアのアルムナイネットワークの画面を見せてくれたうえで、アルムナイネットワークの意義について熱く語ってくれたことがあります。