今なら目指せる! 医学部&医者#19Illustration by Yukiko Kikutani

かつて医療系のスタートアップといえば、医薬品開発が主流だった。しかし今、主流となっているのはITやインターネットを活用したサービスだ。この波に乗り、起業する医師が増えている。特集『今なら目指せる! 医学部&医者』(全24回)の#19では、注目の「医師起業家」5人を選んだ。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

「週刊ダイヤモンド」2023年6月3日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

医師起業家への視線
かつては冷ややかだった

 メドピアの石見陽社長CEOが医師でありながら起業をした約20年前、周囲の視線は冷ややかだった。

 当時は、医師の育成に1人1億円規模の税金が注がれているのだから、臨床医として患者を治療することに徹するべきだという声が多かった。また、社会的地位のある安定した高給取りでありながら、リスクの高い会社経営をやることに共感が得にくかった。

 それでもメドピアは医師向けコミュニティーサイトの運営を柱に事業を広げていき、2014年に上場を果たした。その頃には起業する医師がどんどん増えていた。

 注がれた税金の元が軽く取れるくらいに、ビジネスで医療に寄与することを先駆者が体現し、「医師起業家」は好意的に認知されるようになった。

医薬品開発からIT活用に
医療系起業の主流転換

 技術進化の追い風もあった。

 かつて医療系のスタートアップといえば、医薬品開発が主流だった。薬の開発は長い時間と大きな資金を要するが、成功確率は高くない。ハイリスク・ハイリターンのばくちのようなもので、多くのスタートアップが失敗した。

 メドピアは別の流れをつくった。技術が急速に進むITやインターネットを活用した医療業界向けのサービスというソフトに軸足を置いたのだ。新薬開発に比べると初期に大きな資金を投じなくていいので、アイデアを事業化するハードルは低い。現場を知る医師だからこそ、埋もれたニーズや解決すべき課題を掘り起こしやすい。

 今やこちらが医師起業家によるビジネスの主流になっている。

 では実際にどんな人物、どんなビジネスが最新の波に乗っているのか。次ページでは、注目の医師起業家5人を選んだ。