半日たっても帰ってこないので、愛美さんは対象者の勤め先の知り合いや、思い当たる知り合いに連絡したり、立ち寄りそうな場所を方々捜し回りました。しかし、1週間たっても見つからず、警察へ行方不明者として捜索願を出しましたが手がかりがありません。
対象者の借金返済のために幾度も援助を求めたことで関係が悪くなってしまった、鹿児島県の離島にある対象者の実家へ連絡しても「わからない」とだけ言われて電話を切られました。
愛美さんは、対象者との関係を金輪際断ちたくて、できるだけ早く対象者を見つけて離婚し、子どもと静かに暮らすことを目的に、私に人捜し調査の依頼をしてきたのです。
対象者が失踪している状況では、離婚が成立するまで最短でも3年はかかるのです。
離婚について定めた民法770条では、離婚の正当な事由の一つとして「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」を挙げています。
つまり、配偶者が失踪したきり何の連絡もない、生きているか死んでいるかさえわからない、という生死不明状態が3年以上続いた場合は、離婚を申し立てることができるのです。
ただし、このときの「失踪」は、人づてに生きていることは確認できているが、自分とだけ連絡が取れない、というケースは含みません。
愛美さんがこれから子どもと暮らしていくためには、児童手当などの自治体からの援助が必要です。しかし、給付の対象はひとり親であるため、対象者を見つけ出し離婚する必要があったのです。
不貞相手の情報もなく
有力な手がかりは見つからず
私は、愛美さん宅にお伺いして、対象者の人物像を詳しく聞き取り、これまで捜した場所や連絡した相手を書き出しました。
対象者がスマホも財布も持っていないことから、捜した場所は徒歩で移動できる10キロの範囲でした。その範囲内にある対象者の糖尿病に対応できる病院をリストアップして、全てに連絡しましたが通院は確認できませんでした。不貞相手のことを含め、対象者の所有物などから手がかりを探そうとしましたが、スマホのロックは解除できず、その他有力な手がかりになりそうなものは特に見つかりませんでした。