地下鉄と乗り継ぎ可能となり乗客増加
運賃「値下げ」するも起死回生ならず

 1日3万人の利用計画のずさんさも、後に明らかになった。名古屋市内への移動で、JR中央本線・春日井駅経由での移動が想定されていなかったのだ。

 実際に春日井駅経由で移動する人が、当時は1万人以上いたといわれる。桃花台ニュータウンの住民団体や自治会は、バス路線の開設を要望したが、「ピーチライナーがあるから」との理由でなかなか認可が下りなかった。ピーチライナーの存在は「不便」「赤字を生む」だけでなく、「必要なバス路線開設の障害」にすらなっていたのだ。

 03年には上飯田駅~平安通駅間の地下鉄路線が開業し、1km近い徒歩乗り換えが解消されたことで、乗客は大幅に増加した。同時期、運賃の値下げ(小牧~桃花台東間を350円から250円に値下げ)に踏み切り、起死回生で立ち直るかにみえた。ところが、乗客増加は運賃値下げと相殺され、経営の改善にはほとんどつながらなかった。

 経営改善のラストチャンスを逃した愛知県と小牧市は、この後に控えていた車両や機器類の設備更新に必要な資金投入を拒否した。こうして廃止が事実上決定した。

典型的な「ビジョンなき鉄道の失敗例」
今なら撤去が進む遺構を見学できる

 撤去が進められているピーチライナーの遺構を遠くから眺めていても、「エレベーターもない高架上の駅、誰が利用する想定だったの?」「駐輪場もクルマ送迎のロータリーもないのに、どう利用促進しようと思ったの?」「空いた土地に何か誘致しようと考えなかったの?」などと首をかしげざるを得ない。

 典型的な「ビジョンなき鉄道の失敗例」ともいえる数々の遺構を、ウォーキングがてら眺めに行くのもいいだろう。なお、小牧駅の南側にあったループ橋も、23年4月時点で撤去工事が進んでおり、こちらも間もなく姿を消す見込みだ。