ToDoリストを「やることを可視化し実行するツール」と認識している人がほとんどです。
書くのは面倒だから使っていない、使ったことはあるけど続かなかったなどなど、ToDoリストの存在を知っていても使ってない人もいます。実にもったいない! タスクをこなすためではなく、自身のメンタル安定のためにToDoリストが使えることをご存じでしょうか?
知れば誰もが「ちょっと使ってみようかな」と思う、「自分のためのToDoリスト」の作り方とは?
30代で経営者歴10年以上、『20代が仕事で大切にしたいこと』著者の飯塚勇太氏に、毎日の「ToDoリスト」の作り方と意外な活用法について伺いました。
(編集/和田史子)

書籍『20代が仕事で大切にしたいこと』の著者が教える、自分のためのTo Doリストの活用法Photo: Adobe Stock

「頭の中のモヤモヤ」を毎日解消してから眠りにつく

漠然としたモヤモヤを、漠然としたまま抱えていると、心も頭も疲れてきます。

私は以前の記事で、メールの受信トレイはその日のうちに空にすることをおすすめしました。
メールの受信トレイと同じく、頭の中のモヤモヤも、毎日すっきり解消してから眠りにつきたいものです。
漠然としたモヤモヤが「明確な課題」になると、「こうすればよいのか」という道筋が見え、心も頭も軽くなります。
ではどうすればいいでしょうか。

モヤモヤを「明確な課題」にして見えやすくするために、自分の頭の中にあるものをすべて紙に書き出します
週報もその一環です。

「心情の変化」を「ありのままに」書く

週報とは、1週間の出来事を振り返り、「できたこと」や「次の週への課題」などを書くものです。
メンバーも私も週報を書いています。
特に提出する必要がないとしても、ぜひともご自身のために週報を書くことをおすすめします。

週報は、「ありのまま」を書いてこそ意味があります
メンバーそれぞれがあけすけに、ざっくばらんに書いてこそ価値があります。

テンプレのような内容、取りつくろったコメント。そういった週報に対し、上司からフィードバックをもらったとしても、書いた本人にとっては何の意味もありません。
私がリーダーを務めるチームでも、メンバーには心情の変化まで自由に書いてもらいます。そして、私自身がメンバーに提出する週報も同じく、心の内面まで率直にさらけ出しています

仕事は「自然体」で。いつもの自分のままでパフォーマンスを発揮するためにも、ありのまま書くことを推奨しています。

私はたまに、自己嫌悪に陥ります。
例えば「昨期末に『会社としてここを目指さないといけないよね』と目標を立てたのに、今期も全然達成できていない」といった状況が起きると、「自分はいったい何をやっているんだ」と自分に嫌気がさします。同時に、経営陣全体としても「今の状態、よくないんじゃないか」とネガティブに考えたりすることがあります。
そのようなことも全部、週報でさらけ出します

私が率先して内面を吐露することで、メンバーは「社長は今、こんなことを考えているのか」とつかむことができますし、「自分も内面を吐露していいんだ」と感じて自分をさらけ出してくれます
あまり元気ではない。コンディションがよくない。ネガティブな内面ほど、吐露してもらえると上司はありがたいものです。メンバーの仕事が思うように進んでいない原因がわかるからです。

週報にはありのままを書きましょう。そしてもしもリーダーの立場で週報を読むのなら、ありのままを受け止める度量を持ちましょう。
まずは内面を吐き出す。そして受け入れる。上司にも受け入れてもらう。こうしたプロセスが、個人のメンタルケアにもなるだけでなく、職場に心理的安全性をもたらします

週報でさらけ出すことは、職場の心理的安全性を高めることにもPhoto: Adobe Stock

もちろん内面を吐露して終わりではありません。すべて吐き出したら、そこから「じゃあどうすればいいか」と思考のスイッチを入れて、改善策を考え、次のアクションにつなげるのです。上司からのフィードバックも大いに参考になるはずです。
この繰り返しで、メンタルの安定をはかりながら、仕事の精度を上げることができます

メンタルにも効く! 毎日のToDoリスト

週報とあわせて、私が活用しているのは、毎日の「ToDoリスト」です。
まずはとにかく、自分の頭の中にあるものをすべて紙に書き出します

「あの人に電話をしなければいけないのに、まだできていないなぁ」とか、「あのプロジェクト、時間がかかっているわりになかなか進まないなぁ。大丈夫かなぁ」といったモヤモヤを、どんなに小さなものでもすべて書き出すのです。形式は問いません。
頭の中の「受信トレイ」を0にするような感覚です。

書き出し始めると、200、300は余裕で出てくるはずです。それでよいのです。

まずは頭の中のモヤモヤを書き出すPhoto: Adobe Stock

すべてを出し切り、頭の中が空っぽになったら、書き出したモヤモヤを「ToDo」に落とし込んでいきます

<記入例>
・△△部の○○部長は、いきなりメールを送ると不愉快になる(モヤモヤ)
ToDoに落とし込むと…

・【月曜AM】△△部の○○部長の席に伺い、プロジェクトの日程候補について相談する
・【月曜PM】○○部長のOKな日程候補をプロジェクトメンバーにメールする

(タスクに変換)

慣れないうちは、とても時間のかかる作業です。
ですが、頭の中に漠然としたモヤモヤがない状態を保つのは、仕事において究極の理想形です。
その状態に自分を置くのは快適ですし、やるべきことはすべて紙に書き出しているわけですから、迷いもなくなります。

漠然とした不安をタスクに置き換えると迷いもなくなるPhoto: Adobe Stock

徹底的に「ToDoリスト」を作る
仕事への不安をなくし、自信をつける有効な方法です。

最初の1回は大変ですが、2回、3回と続けていくうちに、やるべきことの数も減っていきますので安心ください。
どんどん作業はラクになっていくはずです。
何より「ToDoリストを作る」という作業そのものが、自身のメンタル安定につながっていると実感できるのが良い点です。

・書くことでモヤモヤや不安を外に吐き出す
・書いたことを「ToDoリスト」にする
・ToDoリストを眺めるだけで「やれそうだ」と自信が出てくる
・実際にToDoリストにチェックマークをつけると「できた!」達成感が得られる

この好循環を生み出せるのが、ToDoリストの魅力です。

タスクをチェックすると達成感が得られるPhoto: Adobe Stock

1日あたりの、ちょうどいいタスクの数は?

ちなみに私の場合は、「ToDoリスト」に書く1日のタスクは5つから最大7つくらい。それほど多くありません。

無理せず継続するためには、数を多くしすぎないことも大切です。

ToDoリストの数は多くしすぎない"Photo: Adobe Stock

数を絞ることによって、おのずと仕事の優先順位付けもできます

書き切れないタスクが出てきたときは、「本当に自分がやるべきことなのか」「誰かの助けを借りたほうが早くないか」といったことも検討します。
「ToDoリスト」を作ることで、メンタルが安定するだけでなく日々の仕事力も上がっていくので一石二鳥、本当におすすめです。

(飯塚勇太著『20代が仕事で大切にしたいこと』から一部を抜粋・改変しています)

飯塚勇太(いいづか・ゆうた)
株式会社サイバーエージェント専務執行役員
1990年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
2011年、サイバーエージェントの内定者時代に、友人らと開発・運営した写真を1日1枚投稿し共有するスマートフォンアプリ「My365」を立ち上げ、21歳で株式会社シロク設立と同時に代表取締役社長に就任(現任)。2014年、当時最年少の24歳でサイバーエージェント執行役員に就任。2018年株式会社CAM代表取締役、2020年株式会社タップル代表取締役に就任(現任)。2020年サイバーエージェント専務執行役員に就任(現任)。
『20代が仕事で大切にしたいこと』が初の著書となる。