リニアといえば、多くの人々が夢見た計画ではなかっただろうか。完成すれば、東京―大阪間がわずか1時間7分で結ばれるのだ。
朝日新聞デジタルでは「リニア中央線新幹線特集」が組まれており、その中で「近づいてきた時間革命」と題して、「最高時速500キロで疾走する次世代の『夢の超特急』、リニア中央新幹線の建設が始まった。2027年に東京(品川)―名古屋間が開業し、45年には大阪まで延びる予定だ。移動にかかる時間で日本地図を描き直すと、新たな姿が浮かび上がる。世の中は、どう変わっていくのだろう」という期待を寄せている。
先の朝日新聞と静岡朝日テレビによる静岡県での世論調査では、リニア中央新幹線の着工については59%の人が賛成、32%の反対を大きく上回っている。
静岡県を南北に流れる大井川を巡り
川勝知事とJR東海が対立
このリニアを巡る問題については、ニュースで大きく取り上げられてきた。そのため、詳細には触れないが、簡単にこれまでの流れを振り返っておこう。
川勝知事がもめ事を始めたのは、2017年までさかのぼる…と、書いて感じたが、もうこんなことを6年もやっているわけだ。
なお、川勝知事は14年の時点で今の主張と同様の知事意見をJR東海に対して出したと主張しているが、本稿では静岡県とJR東海の対立が表面化した17年を起点とする。
リニアのトンネル工事をすると、静岡県の中部を南北に貫流する大井川の水量に影響が出るのではないかという懸念があった。確かに歴史を振り返ると、水量が減って困ったことや増えすぎて氾濫してしまったこともあった。流域周辺の農家などが心配するのも当然だろう。
そこで17年、静岡県とJR東海、そして大井川の利水団体が協議して、「リニアの工事をすると大井川の水量に影響を与えるかもしれないので、その場合はJR東海が責任を持って水量を調整する」旨で、「大筋合意」ができていた。