「幸福」を3つの資本をもとに定義した前著『幸福の「資本」論』からパワーアップ。3つのの資本に“合理性”の横軸を加味して、人生の成功について追求した橘玲氏の最新刊『シンプルで合理的な人生設計』が話題だ。“自由に生きるためには人生の土台を合理的に設計せよ”と語る著者・橘玲氏の人生設計論の一部をご紹介しよう!

統計的世界は未来を予測できる

 期待値がリターンの平均なのに対し、リスクは「標準偏差」で表わされる。平均値からのばらつき具合を示す指標だが、学生時代に嫌というほど目にした偏差値で考えるとわかりやすい。

 偏差値では50を平均として、1標準偏差が10になる。偏差値60は平均より1標準偏差高く、偏差値70は2標準偏差高い。

 ベルカーブ(正規分布)の特徴は、煙突型であっても、平坦型であっても、標準偏差ごとにその事象が起きる確率が決まっていることだ。

 具体的には、平均から1標準偏差離れた区間にはすべての事象の34・13%が、2標準偏差離れた区間には13・59%が、3標準偏差離れた区間には2・14%が、4標準偏差離れた区間には0・14%が含まれる。

 身長のばらつきは正規分布で、日本人の場合、成人(20~29歳)男性は平均身長171・4センチ、標準偏差5・8、女性は平均身長157・5センチ、標準偏差5・4だ。

 あなたがこれから初対面のひとに会うとして、相手が日本人全体の母集団に属しているのなら(ファッション・モデルとかバレーボール選手などの身長に偏りのある集団でなければ)、約7割(68・26%)の確率で、男性なら165・6~177・2センチ(171・4±5・8)に、女性なら152・1~162・9センチ(157・5±5・4)の範囲に含まれると予想できる。

統計的世界の出来事であれば、未来をある程度は予測できるPhoto :kei.channel / PIXTA(ピクスタ)

 同様に、2標準偏差離れた男性(177・2~183センチ)と女性(162・9~168・3センチ)に出会うのは7~8回に1回(13・59%)、3標準偏差離れた男性(183~188・8センチ)と女性(168・3~173・7センチ)に出会うのは47回に1回(2・14%)、4標準偏差離れた男性(188・8~194・6センチ)と女性(173・7~179・1センチ)に出会うのは714回に1回(0・14%)だ。

「それがどうした?」と思うかもしれないが、たとえ確率的であっても、未来を予測できるのはすごいことだ。統計学以前は、因果論で説明できるごく限られたこと以外は、将来は直観によって「なんとなく」予想するしかなかった。だがいまでは、(正規分布する)統計的世界の出来事であれば、どんなことが起きそうかを数学的に記述できるようになったのだ。

※この記事は、書籍『シンプルで合理的な人生設計』の一部を抜粋・編集して公開しています。

橘玲(たちばな・あきら)
作家
2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)など。最新刊は『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)。毎週木曜日にメルマガ「世の中の仕組みと人生のデザイン」を配信。