仕事のできる部下は、ひそかに上司をコキ使っています。
しかも、上司自身はそのことに気づかず、喜んで部下に尽くしています。
「上手に上司の力を借りる」ことで、できる部下はどんどん成長します。
目上の人を手玉にとる、いわゆる「オヤジ転がし」とも違うようで、周囲からの信頼もうなぎのぼり。
本当にできる部下は、いったいどのように「上司を使っている」のでしょうか。
30代で経営者歴10年以上、『20代が仕事で大切にしたいこと』著者の飯塚勇太氏に、「上司使い」のうまい部下だけがひそかにやっていることについて伺いました。
(編集/和田史子)
アドバイスをもらったら、すぐ実行&報告する
周りの人から受ける「フィードバックの量」や周りの人から得る「アドバイスの量」と、「成長の角度」には、相関関係があります。フィードバックをもらえばもらうほど、アドバイスをもらえばもらうほど、ビジネスパーソンとして早く大きく成長できるのです。
新卒として入社してくる社員に、私はよく「いろいろな相手と、継続的に相談し続けられる関係をつくってほしい」と話しています。これは私自身も意識している考え方です。
たとえば、上司に何かを相談して、「Aという行動をしたほうがいい」とアドバイスをもらったとします。
このアドバイスに対し、その場で反論するようなよっぽどの違和感がない限りは、実行に移すべきです。
それも、できるだけ早く、すぐに実行に移すべきです。
私だったら、「やります。ありがとうございます」と言って1~2時間後には必ず実行し、アドバイスをくれた上司に報告します。
・せっかくアドバイスをしたのに、全然実行してくれない部下のAさん
・すぐに実行してくれる部下のBさん
・すぐに実行し、その結果を報告してくれる部下のCさん
もしも3人が後日、別件で相談にきたとき、私が上司だったら断然、cさんの相談に親身に乗りたいと考えるからです。
実のところ、まじめな新人の多くは、残念ながらBさん止まりです。
Cさんのように「結果を報告」までできると、「仕事のできる人」だと確実に評価されます。
「相談」は基本的に、受ける側にとっては何の得もない行為です。それなのに時間も労力もとられ、アドバイスまで求められるわけです。
相手にとって大きな負担を強いるわけですから、アドバイスをもらったらすぐ確実に実行し、報告しましょう。
相談する側には「実行責任」と「報告責任」が生じます。なんだか重いように感じますが、この2つを果たせば、相手は継続的にあなたの相談に乗り続けてくれます。
相談を「一往復」で終わらせない
相談上手な人は、上司や周囲の人たちを使うのが上手な人と言えます。
こういう人は、相談を「一往復」では終わらせません。
相談し、アドバイスをもらい、実行し、報告する。その報告が終わったタイミングで、「今度はこの件なんですけど…」と新たな相談を持ちかけます。
これこそが「継続的に相談し続けられる関係」です。
前述した通り、相談は、受ける側にとっては何の得もない行為です。
でも、自分が与えたアドバイスをすぐに実行してくれて、「おかげさまでこうなりました。ありがとうございました」と報告してくれるのはやっぱり嬉しいものです。
だからもう一度相談されても悪い気はせず、結局付き合わされることになります。
私も、社長の藤田(晋)を相手に10年以上、相談し続けています。
あれだけ忙しい人をとっ捕まえて、何の得もない行為を強いているわけですが、藤田もまた、嫌な顔をせず、私の相談に付き合ってくれています。本当にありがたいことです。これは決して、私だけが特別だからではありません。私が藤田に相談し、アドバイスをもらうたびに、そのアドバイスをすぐ実行し、すぐ報告し続けているからです。
多少、図々しいくらいでちょうどいい
「正直、何度も相談するって図々しくありませんか?」
「それって飯塚さんの立場だからできるのでは?」
こんなふうに思った人もいるでしょう。
心配することはありません。
特に新人や若手、部下のみなさんは図々しいくらいがちょうどいいと思ってください。
上司の立場になって考えてみるとわかるでしょう。
一生懸命仕事に取り組んで、たくさん質問も報告もしてくれる部下は、素直に応援したくなるはずです。
・(部下から見て)図々しい
→(上司から見て)積極的だ
・(部下から見て)何度も聞きに行くのは恥ずかしい
→(上司から見て)問題解決の意識が高い
・(部下から見て)上司に媚を売っている
→(上司から見て)結果を出すことに集中している
こんなふうに、まったく違った姿に見えているのです。
特に「上司に媚を売っている」については、実際にそのケースもあるでしょう。
しかし、本当に仕事ができる人は、「上司のごきげんをとる」ことをゴールにしていません。
あくまでチーム全体の成果のため、ひいては自分の成長のために、上司をどう使えばいいのかを考えて行動しています。
「継続的に相談し続けられる関係」の相手が増えていくと、「フィードバックの量」も「アドバイスの量」も、爆発的に増えていきます。自力でがんばるよりも、早く、大きく成長することが可能になるのです。
だからこそ、できる人ほど、さりげなく上司を使っているのです。
(飯塚勇太著『20代が仕事で大切にしたいこと』から一部を抜粋・改変しています)
株式会社サイバーエージェント専務執行役員
1990年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
2011年、サイバーエージェントの内定者時代に、友人らと開発・運営した写真を1日1枚投稿し共有するスマートフォンアプリ「My365」を立ち上げ、21歳で株式会社シロク設立と同時に代表取締役社長に就任(現任)。2014年、当時最年少の24歳でサイバーエージェント執行役員に就任。2018年株式会社CAM代表取締役、2020年株式会社タップル代表取締役に就任(現任)。2020年サイバーエージェント専務執行役員に就任(現任)。
『20代が仕事で大切にしたいこと』が初の著書となる。