アマゾンが狙うのは
中流〜下流層の消費者
アマゾンは2014年に、Fire Phoneを発売しました。これはiPhoneと競合する独自のスマホだったのですが、結果としては不振で販売中止に追い込まれます。
「また、同じ失敗を繰り返すのか?」
そう思うかもしれませんが、実は今回は違います。アマゾンが提供するのは、携帯電話サービスです。
簡単に言えば、アマゾンが今回提供するのはSIMカードないしはeSIMで、たとえばiPhoneのユーザーがAT&Tなどの通信会社からアマゾンへ乗り換えるようなケースを想定したサービスだということです。
アメリカは日本以上に貧富の格差が拡大しているため、中流ないしは下流の消費者に向けたサービスは市場のボリュームゾーンになっています。この格差拡大でたとえば小売り最大手のウォルマートは独り勝ち状態で、店舗の売り上げが激増しただけではなく、下流層に向けた金融サービスや広告サービスで新しい収益源を獲得しています。
アマゾンが狙っているのも、おそらく同じ消費者を対象としたビジネス市場でしょう。これまでもAmazonプライムが、その強力な武器として使われてきました。
アメリカと日本では、Amazonプライムの内容というか質が若干違います。説明すると、アメリカではサービスが月額14.99ドル、年間プランは139ドル(約1万9500円)なので、日本の年額4900円よりもかなりお高めです。
しかし、日本と違うのは無料サービスの量です。日本人がよく使う送料無料はもちろんのこと、Prime Video(動画配信)とPrime Reading(書籍)のコンテンツ数は日本の10倍以上あります。音楽のAmazon MusicやゲームのPrime Gamingを含めて基本的に付帯サービスだけで、下流層はスマホ生活を十分に楽しむことが可能です。
一方で、中流の上や富裕層は当然のように動画はNetFlixに入り、音楽はSpotifyにという形で有料サブスク消費が広がっているのですが、ベースとしてAmazonプライムを使うという点では中流も富裕層も、下流層と共通です。
Amazonは国別のプライム会員数を公表していませんが、報道ではコロナ禍でアメリカのプライム会員が1億人を突破したそうです。すでに国民的に利用するインフラサービスの位置づけにあるのです。