「この疑惑の真相を探ろうと取材をした同僚もいた。経済部の男性記者(46)は別の部署にいた08年、複数の元ジャニーズの男性を見つけて話を聞いたが、記事化に至らなかった。『被害意識を持ち、それを訴えたいという人に会えなかった。その他の取材結果も合わせて検討し、この状況では記事にはできないと当時は判断した』という。『ジャニーズはタブーではなかったし、新聞なら書けると思って取材をした。結果として、記事にできるだけの材料をそろえられなかったのは情けないのだけれど』」
ということだそうだ。人権意識が強いとされる朝日新聞でさえ、このありさまである。報道する基準に達していなかったので報道しなかったとも読めるので、よく読むと何を反省しているのかが分からない文面ですらある。
藤島ジュリー景子社長の謝罪動画は
吉本興業の闇営業問題会見と対照的
週刊文春とBBCなど、今日の大炎上以前に問題をきちんと取材し、取り上げてきたメディア以外の全メディアは「見て見ぬふりをしてきた」と言われてもおかしくない。現状、ジャニーズ所属のタレントたちが「本当は知っていたんだろ」という集中砲火を受けているが、日本国中で「見て見ぬふり」があったわけで、社会としての問題はより根深いものがあり、所属タレントだけを攻撃するのは行き過ぎの面があろう。
また、道徳的には責められようが、経営者や公務員などでもない限り、一所属タレントが加害事実を知ったとしても、直ちに法的に告発義務などは発生しない。
思えば、藤島ジュリー景子社長による謝罪動画は、メディアコンサルタントがやるような火消しテクニックが随所に見られた。それらは新聞やテレビへの影響を抑えることには成功した。日曜日の夜にテレビの報道番組が少ないこと、次の日が新聞休刊日であることだ。「テレビや新聞のみなさん、報じたくなかったら、あまり報じなくてもいいですよ」というジャニーズ事務所の「穏便に済まそうねサイン」とも読み取れるものだった。
しかし、週刊文春をはじめとするジャニーズ事務所に気を使う必要のないメディアから「こんなことで騒動を終わらせられてたまるか」と反感を買い、火を付けてしまった可能性が高い。その点、吉本興業の闇営業問題での記者会見は、当時はたたかれたものの、その後、幕引きに向かっていった。