文春は報道時、ジャニー喜多川氏による少年たちへの性暴力を「ホモ・セクハラ」と名づけ、14回にわたるキャンペーンで伝えている。それに対してジャニーズ事務所とジャニー喜多川氏は、週刊文春を名誉毀損に当たるとして裁判に訴えた。東京地裁は2002年、文春に880万円の賠償命令を出すこととなる。逆に、03年の東京高裁判決ではセクハラに関する記事の重要部分を真実と認め、賠償額を120万円に減額となり、2004年に最高裁が上告を棄却し、確定している。
加害疑惑の渦中であるジャニー喜多川氏は、鬼籍に入っているので(亡くなってしまっているので)、被害者の一方的な告発しか読むことができないのが残念であるが、事実とすれば、それはそれは、おぞましい事件だ。
朝日新聞の論説委員による「反省記事」
何を反省しているか分からない面も…
朝日新聞(5月27日)で田玉恵美論説委員が、長きにわたって疑惑があったにもかかわらず、朝日新聞が今年の4月まで見過ごしてきた原因について、このような「反省」を述べている。
「朝日新聞は一連の判決をすべて報じている。ただ、今になって記事を見返すと、扱いが小さすぎるように感じる。一審判決は夕刊の社会面で3段見出しだったが、あとの二つは朝刊社会面のベタ記事だ。記者の署名がついていないため、今となっては誰が記事を書いたのかもよくわからない。事情を知っていそうな同僚たちやOB・OGらにできる限り聞いたが、そもそも文春の記事の内容や裁判の詳細について当時の状況を覚えている人がいなかった」
「(10~13年に文化部に在籍していた際)ジャニー喜多川氏に『良からぬうわさ』があるのは漠然と知っていたが、具体的に知ろうとしなかった。文春の記事や裁判の判決文も、最近になるまで読んだことがなかった。あのころ目を向けていたのは、ジャニーズ事務所や放送局にとって都合のいい芸能界の華やかな側面だけだ。そのビジネスに組み込まれた重大な疑惑であり、現在進行形で被害が続いているかも知れず、新聞こそが取材すべき案件であると考えることができなかった」
さらに、この論考において、「反省」よりも注目すべきは、朝日新聞も性暴力疑惑を取材しておきながら、紙面に出さなかったことである。