子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では本書の内容から、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。

世界標準の子育てPhoto: Adobe Stock

環境に言葉が少ないと言葉に対する反応が悪くなる

 子どもの「言葉の力」を強く育てるには、生まれてから6歳までの家庭環境が重要です。

 この時期の子どもは言葉を習得する最適期にあり、適切な環境があれば、2カ国語でも、3カ国語でも何の苦労もなく身につけることができます。

 しかし一方で、乳幼児期に言葉のインプットが不足すると「言葉の力」が形成できず、思考力が弱い子どもに育ってしまいます。

 生まれてきた赤ちゃんの仕事は「環境に適応すること」です。

 赤ちゃんの周囲に「言葉」という刺激が少ないと「言葉は生きるために必要ないもの」と脳が認識してしまい、頭脳が言葉に対してあまり反応しないように育ってしまいます。

 頭脳の配線工事は「6歳まで」90%が完成すると言われており、この時期は生きた言葉の刺激を大量に与えることが重要です。

 親や周囲の人が子どもの世話や遊びを通して言葉をたくさんかけてあげれば、言葉に応じやすい頭脳が形成されます。

手のかからない赤ちゃんは要注意

「手がかからない子」という褒め言葉がありますが、「おとなしい赤ちゃんでラクだ」と喜んではいけません。

 手のかからない赤ちゃんほど言葉の発達が遅れる危険があるので、赤ちゃんが目を覚ましている時は声をかけ、コミュニケーションをとることを心がけてください。

 特に、母親と赤ちゃんがいつも家で二人きり、四六時中テレビをつけっぱなしという環境は要注意です。

 残念ながら、機械音では赤ちゃんの言葉は育ちません。子どもが言葉を最初に身につける時は、「信頼できる相手とのコミュニケーション」が必要なのです。

 赤ちゃんにとって、もっとも信頼できる相手は母親です。その証拠に、赤ちゃんは生まれた直後から母親の言葉か別の人の言葉かがわかります。

 母親が「かわいい◯◯ちゃん、おはよう」と話しかけると、赤ちゃんは母親の顔をじっと見て「アウゥ、アウゥ」と答えます。

 それに対して母親は「お腹が減ったんだね! 今おっぱいをあげますよ」と声をかけます。すると、赤ちゃんは手足をばたばたさせて喜びます。これが「信頼できる相手とのコミュニケーション」です。

 言葉だけでなく、表情やしぐさを通して意思を伝え合う。子どもが言葉を最初に身につける時はこのプロセスが必要なのです。