効率化から価値創造へ踏み出し
成果測定による仮説検証を

 最初のDXレポート公開から5年目の今も変わらない、効率化中心の投資については、レポート2.2も指摘するところである。DX推進に対して投入される経営資源がサービスの創造・革新といった価値向上に向かっていないことは、危惧すべき点である。

 また白書が示すように、投資による成果がどの程度現れているのか、仮説検証に至るための効果測定が多くの企業で行われていないことも問題だ。「変わらなければ」というかけ声だけでは真のDX実践にはほど遠い。デジタライゼーションが徐々に進んでいることは評価に値するが、「企業がデジタルで変わること」は顧客に与える価値をさらに生み出したり増やしたりするための手段であって、目的ではないことには留意すべきだ。

 DXの実践にあたっては、2020年11月に経済産業省が取りまとめ、2022年9月に改訂された「デジタルガバナンス・コード」も参照するといいだろう。デジタルガバナンス・コードは、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をまとめたものだ。

 デジタルガバナンス・コードを実践したい中堅・中小企業等に向けては「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」も用意されている。この手引きはDX実践のために必要な手法や技術に対する理解不足、人材不足、事例不足などの課題に対する回答の1つとして、中堅・中小企業においては特に有益ではないかと思う。

 手引きにはDXの意義をはじめ、実現のための4つのプロセス、成功のポイントのほか、全国のDX実践企業の取り組み例・事例も11件掲載されている。末尾にある「DXセレクション2022」選定企業の経営者からのメッセージも力強い。規模の大小にかかわらず、DXに取り組んでいる、あるいはこれから取り組みたいという企業の経営者や推進担当者にとっては大きなヒントになるのではないだろうか。