同じくデジタル戦略部で、LION AI Chatのインフラを構築した久保覚さんは、ChatGPTの第一印象を「とってもいい相談役」と振り返る。

ライオン デジタル戦略部 情報システムグループ インフラチーム 久保覚さんライオン デジタル戦略部 情報システムグループ インフラチーム 久保覚さん Photo by M.S.

「システムは技術だけでは動きません。プラットフォーム化して業務と結びつけていくような考え方が必要です。それを言語化する際、ChatGPTにフレーズを考えてもらいました。想像以上に完成度が高く、これは壁打ち相手として製造や物流、営業など、他の業務でも使えるなと思いました。今後、LION AI Chatには、ネットワーク機器の設定に必要なコンフィグレーションを書いてもらおうと思っています」

 LION AI Chatの狙いは、単なる業務効率化ではない。従業員の能力を拡張し、そこから生まれる活気やスピード感が新たな価値や企業文化を創造していく、そのためのLION AI Chatだ。活用法は待っていれば降ってくるものではない。ひとりひとりが自分ならどう使うか実際にやってみて、編み出していく必要がある。

「無意識に外部に機密データ送信」を防ぐため
セキュアで柔軟性の高い専用インフラを構築

 ChatGPTを利用する上で懸念となるのが、情報の取り扱いだ。ChatGPTに機微な情報を入力しないよう注意喚起している企業は多いものの、外部にデータを送信しているという認識がないまま社外秘や個人情報を入力してしまうケースは往々にしてあるだろう。

 Azure OpenAI Serviceを介して送信されたデータは、APIリクエストの処理と応答の生成にのみ使用され、AIのトレーニング等に二次利用されることはない。また、APIキーやトークンによってアクセス制御を行うため、不正アクセスや悪意ある利用も防止できる。

 ライオンではさらに、AWSを活用し、セキュアでスケーラブルなLION AI Chat専用のインフラを構築した。ここ数カ月で、Azure OpenAI Service以外にも魅力的な対話型生成AIが続々登場している。APIを切り替えれば、(適切な開発やチューニングは必要だが)他の対話型生成AIも柔軟に使い始められるようにしたのだ。

Azure OpenAI ServiceとAWSを組み合わせた構成図Azure OpenAI ServiceとAWSを組み合わせた構成図 提供:ライオン 拡大画像表示

 インフラを構築した久保さんは、「設計・運用テスト・リリースまで一カ月足らずで完了した」と明かす。