【その2:サポート体制の充実】

 二つ目は、デジタル戦略部によるサポート体制の充実だ。利用者数の増加に伴い、「LION AI Chatに質問してみたけれど、いい答えが返ってこない」という問い合わせも増えてくる。実は多くの場合、“聞き方”に問題があるのだ。

「例えば、LION AI Chatに『ある特許の要約をしてほしい』というリクエストを投げるとします。ここで特許の識別番号だけ伝えても、学習データに含まれていないので、LION AI Chatは返答に窮してしまうんです。『そういう仕組みなので、識別番号だけではなく、特許の情報自体も入れて要約させてくださいね』と伝える。個別に対応したり、各部門の会議で説明したり、社内イベントで講演したりと、いろいろな機会を作ってLION AI Chatを便利に使う方法を話しています」(百合さん)

ライオン デジタル戦略部 データサイエンスグループ 百合祐樹さんライオン デジタル戦略部 データサイエンスグループ 百合祐樹さん Photo by M.S.

 大吉さんは、「最初は無理に業務で使おうとしなくてもいい」と言う。

「なかなか欲しい答えが返ってこないと、『なんだ、使えないね』と諦めてしまう気持ちも分かります。でも、いい答えが返ってくるように質問の練習も必要だと思います。最初は人生相談でもいいんです。使ってみて、『こんな聞き方をしたらうまくいくんだ』と小さな成功を繰り返すこと。それが、最終的には業務に使える質問力になっていくと思います。Teamsの『やってみた』は、そんな遊びを共有できる場にもできたらと思っています。ただ、Teamsの情報はタイムライン同様すぐに流れてしまうので、役立つ情報をストックしていく方法も考えていきたいです」

【その3:機能アップデートでチャット以外の用途を開拓】

 三つ目は、LION AI Chatの機能をアップデートし、チャット以外にも用途を広げていくことだ。デジタル戦略部では、機能アップデートが利用者・利用回数の増加に最も寄与すると見ている。

LION AI Chatに「社内コミュニティの企画書を作ってください」とお願いLION AI Chatに「社内コミュニティの企画書を作ってください」とお願いすると、サクッと作ってくれたうえ、コミュニティ名まで提案してくれたという。コミュニティが盛り上がるか否かは名付けに掛かっているといっても過言ではない。果たしてどんなコミュニティ名にするのだろうか Photo by M.S.

ChatGPTは新しいおもちゃ
しかしその実力はおもちゃの域を超えている

 黒川さんは、個人でも有料版のChatGPTで活用法を吟味している。初めて子どもたちにChatGPTを見せたとき、淡々と、時に悩むように回答するChatGPTに、子どもたちが「AIがんばれ!」と声を掛けたことが印象的だったと話す。「なるほど、生まれたときから当たり前にタブレットやスマートスピーカーがあって、音声操作することに慣れているこの子たちからすると、ChatGPTは生きていて、自分と会話するおもちゃなんだ」と。

 ChatGPTはすでにおもちゃの域を超えている。アップデートすらいちいち破壊的で、黒川さんはそれを追っているだけでもワクワクして、頻繁に役員にインプットしているという。新たな技術がおもちゃで終わるか、キャズムを超えられるか。それは結局、使う人にかかっているのだ。