子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では本書の内容から、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。

世界標準の子育てPhoto: Adobe Stock

「本当に自分の選択なのか?」と問うてみる

 中高生は、人生で初めて「大きな選択」を行なう時期です。高校受験、大学受験、専門学校、就職、自分の進路を決めなければなりません。

 自分は何者なのか、自分は何に向いているのか、自分はどう生きたいのか、自分と真剣に向き合わなければならない時期です。

 子どもの進路を決めてしまう親もいますが、子どもの人生は、子どものものです。親が決めるのではありません。

 どの学校に行きたいのか、そこで何を勉強したいのか、将来何になりたいか、子ども自身で選択しなければなりません。

 とは言え、まだ人生経験の少ない子どもです。子どもの決める選択が必ずしも正しいとは限りません。その時の感情や友だちの意見に流されていることもあるでしょう。

 そこで、「良い選択」をするには、深く考えることが必要だと教えてあげてください。

「仲の良い友だちが行くからボクもその学校に行きたい!」と子どもが言った時は、本当にその選択で後悔はないのかどうか、深く考えるようにアドバイスをしてください。

 この際は、「なぜ?」かを問いましょう。

「なぜ自分はこの学校に行きたいのか」──「友だちが行くから」
「なぜ友だちが行くから行きたいのか」──「友だちと一緒にいたいから」
「なぜ友だちと一緒にいたいのか」──「他に友だちがいないから」

 このように掘り下げていくと、その学校を選ぶ理由が「他に友だちがいないから」。つまり新しい環境に入って友だちをつくれないことへ不安を感じていることがわかります。

 そこで、人生は選択の積み重ねでつくられていくこと、後で何が起きても人のせいにはできないことを子どもに伝えてください。

「選択」を意識できると人に流されなくなる

 これは大きな選択でなくとも、身近なことでも同じです。

「明日テストがある。でも遊びに誘われた」。この時に「遊びに行く」、「テスト勉強をする」どちらを選択するのか子どもに考えさせましょう。

 さらに、その選択の結果、何が起きるのかを考えさせてください。

「明日テストだから今日は勉強しなさい!」と命令すると子どもは反発するので、それよりも「自分で選んでいいんだよ」と伝えてください。

 ただし、「選択する時は、結果を考えるように」と付け加えてください。

 この際、子どもが「遊びに行く」ことを選択してもとがめてはいけません。「自分で選択している」という気持ちは子どもの頭に残ります。

 するとテストが気になって、早めに遊びを切り上げて帰ってくるようになります。

選択に迷っている時は難しい道をアドバイス

 子どもが選択に迷っている時、親としては「難しい道」を選ぶようにアドバイスしましょう。

 たとえば「今の自分の成績で確実に入れる学校」と「今の成績では難しいけど通いたい学校」を決めかねている時は後者を選ぶようにすすめましょう。

 もちろんすべり止めも必ず受験してください。あとで「失敗したけど、どうしてくれるんだ!」と怒鳴り込まれても困ります。

 学校選びだけではありません。ボランティア、短期留学、サマースクールへの参加など、子どもが「今の自分には難しいな」と思っていることほど、勇気を出して選択できるように親は背中を押してあげてください。

「自分には無理」とチャレンジを避けていると、何をするのも怖がる消極的な人になってしまいます。

 また「あの時、他の選択をしていたら……」と後悔の多い人生を歩むことになります。

 志望の学校に入れなかったとしても、その後にもっとがんばって、より良い大学や大学院や仕事を勝ち取って、自分の人生を追求していけばよいのです。

 志望校に入って遊んでいる人よりも、学生時代を通して努力を継続した人のほうが、結果として良い人生を歩めます。

 同じ学校で、同じ時間を過ごしていても、困難を選んで入学してきた人のほうがはるかに多くの経験と知識を得ることができるのです。

 学生時代に「困難」を選択しないと、一生チャレンジを恐れる人になることを子どもに伝えてあげてください。学生時代の失敗は、必ず取り戻すことができます。