株価・給料・再編 5年後の業界地図#15Photo:mikkelwilliam/gettyimages

外資系戦略ファームやBIG4(デロイトトーマツ、PwC、EY、KPMG)、アクセンチュアなど総合コンサルティングファームは足元で絶好調だが、水面下では業界の垣根を越えた人材獲得争奪戦が激化している。5年後の勝者になるには、この争奪戦に勝たなければならない。他業界への流出や急務となる人材育成など、課題は山積みだ。特集『円安・金利高・インフレで明暗くっきり! 株価・給料・再編 5年後の業界地図』(全24回)の#15では、これから業界が直面する課題と現実について、コンサル分野に精通する転職エージェント、コンコードエグゼクティブグループの渡辺秀和CEO(最高経営責任者)の特別寄稿をお届けする。コンサルファーム間の競争が激化する中、働く人たちのキャリアや待遇にも変化が生まれるのか?

※2022年6月28日に公開した有料会員向け記事を、期間限定で無料公開!全ての内容は取材当時のままです。なお、7月中旬から特集『5年後の業界地図2023年版』がスタートします。ご期待ください!

未曽有の活況を呈するコンサル業界
組織体制が明暗を分ける

 コンサル業界が空前の活況ぶりだ。マッキンゼーやBCGといった戦略ファームやBIG4(デロイトトーマツ、PwC、EY、KPMG)、アクセンチュアなどの総合ファームを中心に、規模を拡大し業績も好調。その他、FAS(フィナンシャルアドバイザリー・サービス)やシンクタンク、組織人事コンサルも好調だ。この10年ほどの間で、コンサルタント人員が数倍規模に増えるファームも珍しくなく、順調に拡大している。

 コロナ禍が本格化した2020年前半ごろは、各ファームとも様子見の雰囲気もあったが、間もなく本格的な採用活動を再開した。今やコロナ前より旺盛なほどだ。例えばアクセンチュア日本法人では、人員規模が約1万8000人(22年3月時点)と6年で3倍ほどに急増している。

 基本的に「単価×人数×稼働率」で規模が決まるシンプルなビジネスだが、規模が増えても単価は下がっていない。何しろ、各社とも受け切れないほどプロジェクトの引き合いがある。決して価格を下げる必要には迫られておらず、むしろ、案件受注後の人繰りの方が問題であるほどだ。

 なぜ伸びているのか。端的に言えば、日本企業が多種多様な経営課題に直面しているからだ。デジタルトランスフォーメーション(DX)が最たる例の一つ。とりわけ、戦略立案から業務改善、ITシステム導入まで、一気通貫で手掛けられるような大手総合ファームへのニーズが強い。

 グローバルな競争環境が激化する中、大手企業は新規事業の重要性も認識しているが、その際、社内人員での立ち上げは難しく、外部の力を借りざるを得ない。他にもSDGs(持続可能な開発目標)や脱炭素への対応など、社内に見識のない新たな経営課題が引きも切らないのだ。

 こうした状況下、企業からコンサルファームへの依頼は、これまで以上に「スピード」と「リアルな成果」を求める傾向が強まっている。これらのニーズに応えられる組織体制を整えられるかどうかが、今後の明暗を分ける可能性が高いだろう。

 今まで以上に、各社とも「採用」と「育成」が深刻な課題となるのは間違いない。既に水面下では、業界をまたいだ優秀層の人材争奪戦が激化しており、各ファームとも危機感は強い。

 その結果、ファームの未経験者でも、“ある分野のスキル”が身に付いていれば、旧帝大や早稲田大学、慶應義塾大学等の出身者でなくとも、30歳代後半や40歳ぐらいで外資系戦略ファームに転職するケースも出てきている。

 次ページ以降では、外資系、国内系、規模別など各ファームの強みや弱みと、進むべき道に加えて、激しさを増す人材獲得争奪戦の行く末を予見。巨大化したファームとそこで働く人たちが勝ち残る方法とは。可能性とリスク要因をひもといていこう。