集中系が働いているときに抑制され、何もしていない休息状態で活性化している領域はデフォルトモード・ネットワーク (DMN)と名づけられました。「集中系」に対して「非集中系」とも呼べる働き方をする領域です。

 この“何もしていない状態”というのは、睡眠時を指しているのではなく、「海を眺めながらぼーっとしている」というような、覚醒はしているが何か目的を持った活動はしていない状態を指しています。

 覚醒して課題をこなしているときに活性化していなくても、実は脳から見れば何もしていないのではなく、脳にとって何か重要な機能を行っているのでしょう。それは、おそらく無意識の領域にあると考えられます。

 脳の広範囲な領域を結び、そのうちのどこかが集中的に働くわけではない、という意味合いから「集中系」に対応して「分散系」と呼ぶことにします。

「何もしないこと」こそが新しい発想を生む

 そして、特に強調しておきたい点として、複数の部位が同時に活性化することで生まれる創造性があります。創造性とは、過去の経験や記憶を組み合わせることによって新たな感覚や概念を生み出すことです。何かに集中して作業を行うことは優れた生産性をもたらしますが、思わぬ独創的なアイデアが生まれるのは、ぼーっとして、少なくとも表向きは何も考えていないとき、という経験は皆さんにもあるのではないでしょうか。

 何かを突き詰めて考えていくと、考えても、考えても先に進まない、壁に当たってしまうときが少なからずあると思います。そういったときに一旦その課題から離れ、力を抜いて非集中の時間を作るのです。分散系を活性化させるのです。すると、朝目覚めたとき、お風呂に入っているときなど全く思いがけない瞬間にひらめくことがあります。