つまり、何かを集中して行っているときは、集中系以外の部位が抑制されており視野が狭い状態になっていますが、特に何もしていないときには分散系によって脳の広範な部位が活性化する余地が生まれるということです。その結果、思わぬ記憶・情報同士が結びついて新たなものの見方や新たな発想が生まれてくる可能性が高まるのです。

脳にとってゲームは害悪とは言い切れない理由

 さてこのように、緊張感を持って何か目的に向けて活動をするときに活性化する「集中系」と、明らかな目的を持った活動時には抑制され、弛緩した状態で活性化する「分散系」の2つの領域が脳にはあると考えてください。

 つまり、この集中系と分散系は片方が活性化しているときは、もう片方が抑制されている、という相互抑制的な関係にあるということです。言い換えれば、集中系と分散系は連動しており、常に助け合う存在である、ということです。

 そして、ここが重要な点なのですが、分散系を抑制する、つまり休ませるためには、睡眠をとることよりも、何か作業に集中するのが最も効果的であるという点です(深いノンレム睡眠もDMNを休ませますが、レム睡眠では逆に活性化することになるため)。

 DMNの過活動はうつと深い関係があるため、うつの治療を考えるとき、何か集中して取り組める対象を持っているかいないか、という点は大きな差につながってくるはずです。

 大好きな趣味があるとか、また、以前ならテレビゲーム、今ならスマホでゲーム、なども集中系と分散系のバランスの中で行うなら、うつや過度の精神的ストレスに対抗するための有効な手段となるでしょう。

 人間が社会の中で生きていくためには、課題に集中的に取り組んで成果を出すことが必要です。ですから集中系の重要さは論を俟(ま)たないのですが、一方の分散系の重要性は目に見えてきません。記憶の統合・整理、創造性の発露といった現象は、ある程度長期的に見ないと評価できない点だからです。