しかし、相互抑制的な関係にあるということは、両者が密な連携を取っているということの証でもあります。

 集中系を有効に働かせるためには分散系が適切なタイミングで活性化していることが必要で、集中系だけが過活動になると脳内の自然な結びつきが断たれてしまいます。それは、脳のパフォーマンスを大きく下げることにつながりますし、最終的には十分に集中することができず仕事の効率を低下させてしまうでしょう。

好きなことに熱中することは、なぜ脳にいいのか

 繰り返しますが、健全な脳の機能維持には大規模ネットワークをバランスよく働かせることがポイント。特にDMNなどの分散系を適度に活性化し、ときには適度に抑制するといった、“バランスよく使いこなす”ことが重要です。

 一般に、脳の大規模ネットワークは、長い軸索に依存する部分が多くなります。最終的にこのような膨大なネットワークの機能を創り出しているのはニューロンであるとしても、他の3つのグリア細胞のパフォーマンスが落ちたり、欠けたりすればこのネットワークは機能しなくなり、またその維持自体が困難となって崩壊してしまいます。

 ニューロン・グリアネットワークを支える4人の役者のうち、最も脆弱なのがオリゴデンドロサイトです。その最大の理由は、ニューロンの活動と維持に必須なミエリン鞘(みえりんしょう、軸索を保護する役目がある)を作り出すための膨大なエネルギー代謝。

 したがって、大規模ネットワークでは、その活動において長い軸索を覆うミエリン鞘を作り出すオリゴデンドロサイトの負担が非常に大きくなる、という現実があります。

 精神的ストレスの強い現代社会ではDMNなどの分散系が過活動になってしまいがちです。そういった環境の下で加齢による認知機能の低下を最低限にするには、脳の仕組みを意識した工夫が必要となります。