頑張っているのに成果が出ない。どうすればいいのか、途方にくれる人も少なくないだろう。そんな人におすすめなのが、『1位思考──後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣』。「週刊ダイヤモンド」「トップポイント」など数々の書評で絶賛。創業9年目で売上300億円にしたアンカー・ジャパンCEOの猿渡歩氏、初の著書だ。猿渡氏は「適度にサボると生産性は上がる」という。コンサル→ファンド→27歳アンカー・ジャパン入社→33歳アンカーグループ最年少役員→34歳アンカー・ジャパンCEOになった著者が、参入したほぼ全製品カテゴリーでオンラインシェア1位になった秘密は、シンプルな6つの習慣にあった。本書の一部を抜粋しながら急成長の秘密を明らかにしていこう。
あなたへの質問
仮説思考は社員にも求めている。
直営店事業の担当者に対する私からの最初の依頼は「売上・利益を最大化してほしい」というシンプルなものだ。
店長を含む関係メンバーはそれを因数分解したり、仮説思考を使ったりしながら実行している。
100人の来店者があったが購入者は10人だけ。これは接客が悪いのか、レイアウトが悪いのかなどと分解して改善する。
さて、ここであなたに質問がある。
「店頭に設置する製品のPOPは英語表記がいいか?
日本語表記がいいか?」
英語表記のほうが外国人にもわかるという以上に、単純に見栄えがよくなりやすい。
POPの見栄えがいいほうが店舗全体もカッコよくなり、お客様の心証がよくなって、売上も増えるという仮説を抱くかもしれない。
ただ現実には、その仮説でうまくいっているケースは非常に少ない。
むしろ英語表記にすると現場ではお客様からの質問が増えるので、店員に追加の手間が発生して効率が下がったり、その工数を減らすためにテプラ®で印刷した日本語シールがベタベタとはられたりするケースもある。
わかりやすさが一番
結果として、日本語表記だけよりも見栄えが悪くなる。
お客様への案内が目的なら、「わかりやすさ」が一番であり、その後「見た目の工夫」をすべきである。
このように仮説はあくまで仮説。
常に正解とは限らない。
ただし、この例のように大きく仮説がズレていると感じたらすぐに修正し、新しい仮説を立て、改善のきっかけにしていくことが重要だ。
アンカー直営店では「わかりやすさ」の観点から店舗に小型ディスプレイを設置して画像や動画による紹介を増やしている。
一般論として画像の情報伝達能力は文字の7倍、動画は文字の5000倍ともいわれているので、その仮説を実行してみたわけだ。
購買率アップの定性データ活用法
結果、購買率は上がった。
このような小さな仮説検証を繰り返すことで、徐々に店舗の売上が上がってきている。
こうした情報は、毎日閉店後に各店舗から送られてくる日報で共有される。
日報には来客数、販売数、売上など定量データのほか、定性的な情報も記入されている。
たとえば、こんな情報だ。
「ご家族づれに、『アウトドア用途だけでなく、災害に備えてポータブル電源を持っていると安心ですよ』とご案内したら買っていただけた」
「USBケーブル端子の違いについて同じ質問が多いので、POPに端子のイラストを追加したところ、個人で買っていただける人が増えた」
仮説検証の事例を共有することで、よかった点は他店舗でもスピーディに取り入れることができている。
これらの施策がどの店舗でも響くとは限らないが、打ち手の一つとして持っておくと有効だ。
そして、こうした新しい情報が、翌日以降の仮説を立てるうえで新しい武器になる。
(本稿は『1位思考』の一部を抜粋・編集したものです)