誰かと話すだけでゲッソリ。1日のエネルギーを使い果たしてしまう……。そんな、社会に出るだけで何かと疲れてしまう「内向型」タイプの人に朗報だ。
台湾出身、超内向型でありながら、超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンは、「静かで控えめ」は賢者の戦略であると語っている。同氏による『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かし、世界的ベストセラーとなった。
本連載では、本書より、静かな人がその潜在能力を最大限に発揮するためのエッセンスを抜粋・編集してお届けする。第1回のテーマは「会社で評価されない人と、評価される人の特徴と解決策」だ。(構成:川代紗生)

「静かな人」の戦略書Photo: Adobe Stock

「私のせいかも」すぐに自分を責める思考のクセ

 職場でもめごとが起きたとき、気がつくと、つい自分が責任をとってしまう、ということはないだろうか。

 何か問題が起こると、「私のせいかもしれない」と、自分で自分を責める思考回路がクセになってはいないだろうか。

 もし頻繁にそういうことがあるのだとすれば、あなたは「内向型」の傾向が強いかもしれない。

ミスした人に「責任を取らせる」のも大事な仕事

「職場でもめごとが起きたとき、内向型人間がやってしまいがちなこと」の一例をご紹介しよう。

『「静かな人」の戦略書』には、こんなエピソードが綴られている。

 優秀な女性がいた。

 彼女は完璧主義だった。職場のメンバーに迷惑をかけることや、みんなと意見が食い違うことをとにかく嫌い、そうならないよう、常にまわりに気を配って、チームワーク第一で、まじめに仕事をがんばっていたという。

 そんな彼女だったが、あるとき、その働き方が仇となる出来事が起きた。

 彼女が所属する部門と、他部門との連絡ミスが原因でトラブルが発生し、顧客からクレームが入ったのだ。

 社内で調査してみると、トラブルの原因は、他部門の担当者が彼女からの指示を誤解し、処理をまちがえたことだとわかった。

 結局、社内でも、その担当者が処分を受けることに──なりかけた、ときだった。

 協調性が高すぎた彼女は、その担当者が叱責されているのを気の毒に思い、会議の場でこう言ってしまったのである。

「もしかしたら、私の伝え方が明確ではなかったせいで、誤解させてしまったかもしれません。これからは二重にチェックして、同じ問題が二度と起きないようにしましょう」

 相手だけに責任を負わせたくないと思っての判断だった。彼女がそう言ったおかげで、その場は丸くおさまったように見えた。

 しかし彼女の上司は会議が終わったあと、彼女を呼び出し、こう言った。

「なぜ向こうをかばって自分が責任を取ろうとする? 君が本当にやるべきことは、彼にちゃんと責任を取らせることだったんだぞ」

 彼女はミスを犯した当事者の責任を曖昧にし、取る必要のない責任を自ら取ることになってしまったのである。

 仕事で評価されるのは、むしろ責任を切り分けて考えられる人だ。一見、冷たく見えるかもしれないが、相手を責めるべきところ、自分が責任を負うべきところを冷静に判断できてこそ、組織にいい影響を与えられる。

内向型は「他人の感情」に影響されやすい

 職場でもめごとが起きたとき、彼女のような行動をとってしまう内向型は少なくない。

 事実、『「静かな人」の戦略書』の著者、ジル・チャンも、似たようなことをやってしまったことがあるという。

 さて、なぜ、内向型の人間は、もめごとを避け、エネルギーを温存しようとしてしまうのだろうか?

 これには、内向型と外向型の脳の特徴のちがいが影響している。

 著者は、著述家のジェン・グランネマンの考えを引きながら、内向型の脳が「即座の反応」を苦手とする理由について、二つの理由がある、と指摘する。

第一に、内向型はじっくりと考える傾向にあり、自分が言おうとしている言葉の真意を慎重に考えてから口を開く。
第二に、内向型は長期記憶に頼る傾向がある。
(中略)
内向型の神経伝達物質系を見てみると、
内向型の脳は即座に反応するのが得意ではないことがわかる。そのため、不確かな状況に対応しながら、二つの言語間で通訳をしなければならないような場合、内向型の脳は過負荷になってしまうのだ。(P.67)

 つまり、内向型は、事前にじっくりと考え、準備してきたことをもとに話したりするのは得意だが、「不意打ちの質問」や「咄嗟に何かを判断しなければならない場面」では、強みを発揮しきれないという傾向がある。

 内向型は、相手の言葉づかいや、身ぶり、表情などから、あらゆる情報をあつめようとする。言外の意味を汲み取るのが得意なのだ。

 これはうまく活用すればビジネスでも大きな武器になるが、一方で、「他人の感情に影響されやすい」という弱点にもなりうる。

職場でトラブルが起きたとき、
内向型が絶対にやってはいけないこと

 ジル・チャンは、こう語る。

内向型にとっては、もめごとが起こった瞬間がとくに耐え難く、たちまち頭が混乱してしまう。八方塞がりで、にっちもさっちもいかない気分になってしまうのだ。(P.137-138)

 きっと同じように、誰かが理不尽に傷ついていたり、責任の押し付け合いがはじまったりする空気に我慢できず、気がつけば「責任を取ろうとしてしまう」人も多いだろう。

 そんな人におすすめしたい解決策が一つある。それは、「その場ですぐに答えない」ことだ。

 先の通り、内向型は他人の感情に影響されやすい。

 とくに、職場でもめごとが起き、感情的な言葉をぶつけられたりすると、頭が混乱してしまうのだ。

 だから、もめごとが起こった場所からいったん離れ、できれば自分一人の時間を確保すること。頭のなかを整理して、気持ちを落ち着けるための時間を取ること。

「一度仕切り直して、午後にまた会議をしましょう」と、時間をあらためて問題を再検討することを、自分から提案してもいいだろう。

 大事なのは、自分にそういう傾向があると理解し、咄嗟に「私が悪かったです」と言いそうになっても、一度立ち止まって考えてみることだ。

「自分のタイプ」を知り、解決策を用意する

 自分に落ち度はないのに、気がつくと、いつも自分が尻拭いをすることになっている。

 そういう人は一度、自分に内向型の傾向がないかどうか、確認してみてはどうだろう。

 もしかすると、無意識の行動が、自分の首を絞めてしまっているかもしれない。

 傾向を知り、複数の解決策を用意しておくことで、より自分らしく、無理せずに生きられるようになるはずだ。