類似の構造なのが富山地方鉄道だ。2018年度の運輸セグメント売上高は約74.9億円で63%、2022年度は約54.9億円に減収したが、依然として60%を占めている。同社は売り上げ規模の小さなセグメントを手広く展開しており、2022年度でみると最大は建設業の13%で、不動産が6%、ホテル業が5%、保険代理業が4%と続く。

 では営業利益はというと、運輸業は約10億円の赤字。利益を上げているのは不動産が約2.6億円、建設業が約1.7億円、保険代理業が約1.3億円程度で、ホテル業は約1.9億円の営業赤字だ。運輸業はコロナ前から赤字だったものの、薄く広い事業で穴埋めしていたのが、運輸業の赤字拡大と各事業の収益性低下で成り立たなくなり、苦境に陥っている。

 ただし広島電鉄と同様、同社も当期純利益は黒字をキープしている。それどころか2018年度の約1億円から約4.8億円へと大幅な増益だ。実はこれも広島電鉄と同じ構図で、2022年度はコロナ助成金約2.2億円と国と自治体からの補助金約8.8億円が支えている。

 補助金はコロナ以前から交付を受けていたが、2020年の脱線事故を受けて設備改修のために増額された経緯がある。2018年度は営業キャッシュフロー(以下CF)約14億円に対し、投資CFは有形固定資産取得による支出8440万円を含むマイナス2.9億円で、多くは借入金の返済に充てられていた。

 2022年度の営業CFは8.8億円に減少したが、有形固定資産取得による支出を約2.2億円に拡大し、投資CFは約6億円のマイナスとなった。しかし財務CFでは引き続き長期借入金の返済、リース債務の返済、割賦債務について計11.7億円を支出しており、8.9億円のキャッシュアウトとなる苦しい状況だ。

自動車販売で稼ぐ静岡鉄道
流通業で稼ぐ伊予鉄

 ここからは逆に運輸業の比率が少ない静岡鉄道、伊予鉄グループを見ていこう。首都圏ではなじみが薄いかもしれないが、実は両社は私鉄グループとしてはかなり大きい。

 2022年度の静岡鉄道の連結売上高は約1546億円で、これはJR上場4社・JR貨物、大手私鉄と、同じく静岡県の私鉄である遠州鉄道に次ぐ規模だ。ちなみに大手私鉄の南海電鉄が約2213億円、京急電鉄が約2530億円である。伊予鉄グループは約298億円で、桁がひとつ小さいが、JR四国は約435億円であり、四国経済における存在感の大きさが分かる。

 静岡鉄道はその規模に反して鉄道事業が非常に小さい。約1546億円のうち、運輸業(鉄道、ロープウェー、バス、タクシー、貨物運送)の売上高は約128億円、そのうち鉄道は約14億円、つまり全体の1%にも満たない。

 そして最大の稼ぎ頭が(鉄道会社にもかかわらず!)自動車販売業である。トヨタ自動車のディーラーとリース事業、自動車整備の売上高は約718億円、営業利益は約19.8億円に達する。運輸業はコロナ前から赤字で、2018年度は約2.3億円の営業赤字。2022年度は約13.5億円にまで赤字が拡大した。