コツコツと業績を伸ばしてきた経営者が直面する「売上の壁」
特に、年間の売上高が2億円から3億円のレベルに達すると、そこでピタッと成長が止まってしまう経営者が多いという。
そんなときに参考になるのが、【発売から18年、2万人以上の経営者に支持されるバイブル】として、待望の新装版が発売された『新装版 売上2億円の会社を10億円にする方法』だ。
本稿では、上場経験のある経営者から熱烈な推薦を受けている本書の中から、経営の基礎である「設計図」思考の一部を紹介する。

「人材育成」を重視する経営者がうっかり見落とす根本的な事実Photo: Adobe Stock

「社員の意識改革」が簡単にできない理由

 道具を設計しようとするときにまず設計者が考え、想定すべきなのは「いったい誰がこの道具を使うのか」でしょう。プロフェッショナル用のハイエンドモデルから、まったくの初心者向けのエントリーモデルまで、やろうと思えばいくらでも考えられます。

 私は、多くの社長に「10億円企業を目指す上でもっとも重要な課題は何ですか?」という質問をよくします。もっとも多い答えとして「人材を育てること」と返ってきます。さらに「人材を育てるとは、どういうことですか?」と聞きますと、「意識改革です」という答えが返ってきます。この答えの裏には、「ウチの社員は何でこんなこともできないのだろう、何とか意識改革してもっと仕事ができるようになってもらいたい」という多くの社長の思いがあります。

 しかし、私はその答えに対して、「それは難しいのではないでしょうか?」と返事をしてしまいます。理由は、そうした返答をする社長は基本的に社員の能力を認めていないからです。ですから、現実には数字に影響するような重要な仕事はほぼすべて自分がやり、社員にはサポート的な仕事しかさせていません。これではいくら社員を育てたいと思っても、社員は育ちません。

 一方、10億円企業をつくる社長は、どうしているでしょうか? 2億円企業の社長にこう話すと、驚かれることも多いのです。「一般的な社員は、平均すれば社長の30%くらいしか仕事ができません。でも、それでOKなのです。30%も仕事ができるようになってくれたら、十分です。その社員に、今社長がしている仕事をやってもらうのです」。

「能力がそれほどでもない人」でも採用すべき深いワケ

 ちょっと不思議な気もしますが、10億円企業としての設計図がしっかりと引かれていれば、能力がそれほどでもない人を迎え入れた方がかえって成長のスピードが上がる、ということです。

「いち早く10億円企業になるためには、人材の優秀さよりも組織としての設計図/ビジネスモデル」。いざ目の前でそう言われると、なかなか受け入れ難い考え方であることは認めます。ある意味で、巷(ちまた)で信じられている経営理論からは距離があると思います。

 しかし私がこれまで支援させていただいたクライアントは、この考え方を受け入れてくれました。その結果は言うまでもありません。「振り返ってみると確かに一番速かった」というのが結論です。
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ここに紹介したことのほか、『新装版 売上2億円の会社を10億円にする方法』では、経営者が企業の成長のために考えるべき「設計図」とは何かをコンパクトに紹介しています。